「もう!いい加減にしてよっ!!」
雲ひとつ無い快晴。
すっきり爽やかな日差しの中で
私の堪忍袋の尾が切れた。
ソレはもう、完璧に。
乾いた風も。
眩しい日の光も。
今の私には、うっとおしいだけだった。
―――5000ヒット記念―――
Leave me alone!
私が三蔵一行と出会い、寝食を共にするようになってから一ヶ月。
その間、一行は目立つことを嫌い極力単独行動を控える方針を取っていた。
それは、身の安全を考えるなら当然の事かもしれないが
私にとって拷問に近いものがあった。
むしろ、これまでの一ヶ月間よく耐えたと自分を褒めてあげたい
くらいだ。
その日も桃源郷は快晴で、旅は順調。
忘れた頃に現れる、刺客達を適当にあしらう一行の影に隠れ
普通に・・・いや、何の感慨も無く見守る私。
そして、予定通りに町に着き。
一人になりたいとの私の意見は瞬殺された。
ジープの中は狭苦しく、息苦しいと感じるのだからせめて
ほっと一息つきたい、宿での時間。
畳にぎゅうぎゅうに敷き詰められた布団が五組。
飽きずにカードゲームを楽しむ(?)悟空と悟浄
もちろん、すぐに取っ組み合いに発展する。
流石に、避け方が旨くなったとはいえ
コンナ状況でくつろげるはずも無く。
ギリギリ崖っぷちの私が目指すのは
当然、出入り口のドア。
ただ、親切に送り出してくれる輩はココには存在しなかったのだが。
「おい、どこへ行く?」
コノ低音で説法を説いたのなら、さぞ説得力があるだろうに
三蔵は、私の行動に御執心の様子。
「どこだっていいじゃない。」
うんざりな私は返事もなげやり。
だが、うやむやで逃がしてくれるほど相手は生易しくない。
「今は単独行動を控えろと、何度も言っているはずだが?」
「そうね、だがら控えていたじゃない。」
「なら、これからもそうしろ。」
「何を言っているの?私は貴方の部下でも奴隷でもなんでもないわ!
ただの旅の連れじゃない。何でもかんでも強制しないで!
頭がおかしくなりそうよ。」
一気にまくし立てると、勢いでドアのノブに手をかける。
出て行くことに何の迷いも無かった。
ずがーん!!
聞きなれた・・・しかし、恐怖の代名詞である銃声が鳴り響く
目の前のドアに、直径10mmほどの穴が開いた。
「・・・・・・・・・。」
息を呑み、一筋の硝煙が立ち昇るソレを見つめる。
出会った頃に付けられた、頬の傷が疼く。
「もう!いい加減にしてよ!!」
鬼の形相で三蔵につかみかかる。
それで、三蔵に殺されようがどうしようが構わなかった。
とにかく私の脳ミソは臨界点を突破し、沸騰していた。
「頼むから、ほっといてよ!!一人になりたいの!!」
何も、これから一緒に旅をしないと言っている訳じゃないんだ
ただ・・・そう、ただ一晩、一人の時間が欲しいだけなのだ。
三蔵の胸倉をつかんでいるため、必要以上にアップで見つめて
しまった紫の瞳。
こんな時でも、それは吸い込まれてしまうほどに澄んでいた。
「今夜は、戻らないわ。」
せっかくの機会だし、三蔵の耳元で飛び切り甘い声で囁いてやる。
他の三人は聞こえないだろうほどの小さな囁き。
ポン。
私のせいで出来てしまった法衣のシワを軽く伸ばしてやって離れる。
「・・・・・・。」
「何?」
「泣くな。」
言われて初めて気が付いた。
頬を伝う、生ぬるいものに。
「ったく、サンちゃんを泣かせてんじゃねーよ。」
ほらよ、と悟浄がテッシュボックスを差し出してくれた。
それに気付いてなお受け取ろうとしない私
仕方なく数枚抜き取り、そっと拭おうとする彼。
親切心からなのは分かったが、今の私はそれすら拒否した
「・・・。」
「ほおっておいて・・・ほっといて頂戴。」
そろそろと、後ずさる
そのまま外に行こうとしたのを察知したのか八戒が止めに入る
「ダメです、。」
「・・・・・・。」
「外はもう暗いんですから、子供が一人でうろつくのは危険です。」
「私・・・子供じゃないよ?八戒と大差ないもん。」
「・・・・・・。」
「見た目は確かに御子様かもしれないけど、中身は女だもん。」
「・・・。」
「だから・・・。」
「大人なら尚更です、女性の一人歩きが危険なのは分かっている
でしょう?」
「分かってるもん・・・だから今日まで我慢してたじゃない。」
涙は留まることを知らず、筋になって流れていく。
けれど、視線は八戒から放さず。
一歩、八戒へと足を踏み出す。
「・・・ご褒美・・・頂戴。」
きゅーんv
不覚にも、小首をかしげた少女に男四人は胸を打ちぬかれた。
「な・・・なぁ、もコンナに言ってんだしさ、シングル一つ借りてやれよ三蔵。」
悟空が遠慮がちに言う。
思わぬ援護に、一瞬キョトンとした後、ふわりと微笑む。
ぼぼ!と、音がしそうなほど一気に悟空のカオが紅に染まった
ご褒美をもらったのは、悟空の方だったのかもしれない。
ただし、見返りは大きそうだが・・・。
つまり、なんだ。
その・・・嫉妬に狂った男は怖いと言うことだ。
「うーん。、そんなに御褒美が欲しいのですか?」
小首を傾げながら八戒が問う。
これは既に何らかの作戦が頭の中を駆け巡っている時のサインだ。
私はコノ一ヶ月間でソレを学習していた。
しかし、自分の欲求には逆らえない。
「うん。」
あえて罠に掛かることにした。
「おい、八戒。」
三蔵が静止の声を上げる。
「ちょっと三蔵は黙っていてくださいね。」
しかし八戒は動じない。
これはもう、止めることは出来ないと内心ため息をつく男三人。
「、良いですか?貴方が単独行動・・・つまり今夜一晩だけ
一人で過ごすとしますね?」
八戒が私に視線を合わせて丁寧に説明を始めた。
「貴方の身の安全を守るためには、傍に居ていただくのが一番なの
ですが、あえてやめるとなると僕達は気が休まらないんです。」
言葉にとげを感じるが、あえてスルーさせる私。
「それでも僕達はコノ部屋で貴方を気遣いながら四人仲良く休む
わけです。」
ここもスルーさせたいが、ねちねち攻撃は好かないので聞いてみる。
「八戒、はっきり言っていいよ。何が言いたいの?」
きっとコレを・・・この言葉を待っていたんだろうな。
八戒はにっこりと笑顔で言い切った。
「つまり、貴方のわがままを聞き入れた僕も、ご褒美が欲しいん
ですよね。」
「嫌。」
私も笑顔で言い切る。
だって何だか、怖かったんだもん。
それに相手の思い通りになるの嫌いだし。
「要求に対してリスクが大きい気がするから嫌。」
ぶっ!
密かに笑う、男三人。
そして、八戒。
「ふふふ、分かりました。でも、お礼くらいは期待しても良いですよね?」
「・・・・・・考えとく。」
「三蔵、にシングルを借りてあげても良いでしょう?」
視線の先には苦虫を噛み潰したような表情の三蔵。
「持っていけ。」
しゅっ!
飛んできた三仏神名義のゴールドカードを起用に受け取り
八戒はドアを開ける。
私にとって開かずの扉がいまやっと解禁された。
そして、一時ではあるが何物にも変えがたかった開放感を
存分に味わった。
「幸せ。」
団体行動は苦手じゃない。
けれど、ずーっとと言うのは耐え難い。
休息と言うものは誰にだって必要なのだ。
見知らぬ異国の地で、一人になりたいと思える私は幸せ者なのかも
知れない。
「何か、お礼をしないと・・・かな?」
無理やり旅に同行させられたとはいえ、彼らに助けられている所が
あるのも事実。
貸りは返すものと相場が決まっている。
まぁ、利子をつける気はさらさら無いが。
そして、混乱の夜は明けて。
「おはよ。」
私は笑顔でみんなに挨拶する。
「昨日はわがまま聞いてくれてありがとねv」
ニコニコとお礼を述べて。
「感謝の気持ちを込めて、朝食は私が作ってみました。」
言いながら皆を手招きする。
「うっわー!すっげ!!なんだよこれ!?」
「へぇ、チャン料理も出来んだ?知らなかったぜ。」
「美味しそうですね、有り難うございます。」
「・・・気を使わせたな。」
悟空は既に飛びついて食べ始めている。
悟浄は軽く頭を撫でてくれた後、悟空と張り合って食事を開始。
八戒は、上品に一品ずつ味わってそれぞれの感想を述べてくれる。
そして三蔵は、黙して語らず。
ただ箸が止まらない所を見ると、気に入ったものと判断して良いと
考えられる。
久々の料理。
いや、コノ体では初めての料理。
いわば初体験!
しかも、小さい体で大量に作ったので結構と骨を折ったのだが。
こうやって気持ちよく平らげてくれるのは、作った甲斐があったと
私の笑顔を自然と引き出してくれる。
しばらくコノ四人と旅を続けられると
ホッとした瞬間だった。
あとがき
はい、こちらは『眠りと目覚めの狭間』の雪兎様から頂きました★
えっと…5000hit記念です!!
リクエストは『機嫌の悪いヒロインに気を使う四人』というものをしました〜。
もう…本当に素敵です!!
悟浄がティッシュを渡してくれるところとかが一番!!
そして、四人の方々がとっても優しくてv
もうこんな人たちに囲まれるなら一人にならなくても…♪
なんて事を思ってしまうほど素敵な作品に素敵な四人ですvvv
オレもこんな作品書いてみたいです…ι
本当に…雪兎様ありがとうございました!!!
2004.09.06
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