黒い波 ―Vol.1―
「・・・というわけで、鋼のはリゼンブールへ向かった」
は、怪我が治るまで少し入院していた。そして今、傷が癒えてやっと仕事場へ戻ってきたらロイが笑顔でそう説明をしてくれた。
まぁ、その内容はエドが腕と弟を直しに故郷へ帰るといった簡単なものだったが。
「状況は分かったわ・・・けど、私は早く仕事に戻りたいからどいてくれる?」
「いや・・・その前に君に話をしておきたいことがある」
「は?ちょ・・・ロイ!?」
何が何だか分からずにはロイに引きずられて東方司令部を出て行った。ハボック達は呆然とその姿を見送り、ホークアイは密かに銃を構えていた。
しばらく歩くと、ロイはあるお店の前に止まった。
「ちょっとロイ?まさか、仕事中なのにこんなところでお茶でもするの?」
「君はまだ本調子じゃないからね・・・私もちょうど休憩に入ろうと思っていたから此処に来たんだ」
「それだけの為だったら・・・」
「ほかにも話はあるからね。まぁ、入りたまえ」
ロイはにそう言ってレストランの中へ案内をした。中は、綺麗でシンプルな造りで、高価なものが見当たらなくても上品な雰囲気を出していた。いかにもロイが選びそうなお店のようには思いながら周りをキョロキョロしていた。その間、ロイは店員さんに『予約をしていた・・・』とか言っている。どうやらこのレストランには個室が別にあるらしい。
「さ、。こっちへ来なさい」
優しい言い方でを個室へ案内をする。こういう場所に来たのは初めてで、はおとなしくロイに従うしかなかった。階段を上っていくつもあるドアの中で一番奥にある部屋の鍵を開ける。
「君が気に入るといいが・・・」
微笑みながらをドアを開けてを先に部屋へ入れる。
「・・・わ・・・すごい!」
目の前にある窓ガラスには、街が一望できて、その中に東方司令部も見えて昼間なので街の活気も此処から見えていた。はそれに驚いて窓へと駆け寄った。
「気に入ってくれたようだね・・・もう少ししたら料理がくるからしばらく窓から外を見ているといい」
「うん、そうする!」
ロイは外を見てはしゃぐを見て『まだ18歳だからな』と心の中で微笑んだ。そのは、街を隅々まで眺めて何処に何があるとかを見て街の地形を把握していた。そんなことをしていると、時間というものはすぐに来てしまう。ドアのベルが鳴って店員さんが料理を運んできたのだ。運ばれるのをはじっと見ていて、ロイは慣れているように店員の人にお礼を言って部屋から出て行かせた。
「ねぇロイ?本当にこんな豪華そうな料理いいの?」
「あぁ、が喜ぶなら私は何でもするさ。遠慮しないで食べなさい」
ロイはのために椅子を引いている。はそんなロイを見てクスクスと笑った。
「何がそんなに可笑しいんだ?」
「だって・・・いかにも女性の扱いに慣れてるって感じがして・・・ロイらしいなって思っただけ」
有難うと言いながらは椅子に座った。
「まぁ・・・私は女性に好かれるタイプだからな・・・しかし、私が本当に好かれたいのはだけだがね」
「はいはい、いつもそんなことを言ってて何が面白いのか・・・」
「面白くはないさ・・・本当のことを言っているだけなんだからね」
「わかったわかった・・・それじゃ、いただきましょうか」
がそう言って食べ始める。それを見届けてからロイも食事を始める。
しばらくは他愛のない話をしていたが、は疑問に思っていたことを話題に出した。
「そういえば・・・ロイは何で私を此処に呼んだの?まさか、本当に私と食事をするだけ?」
「君と食事に来たかったのも本音だが、今回はそれだけではない」
「じゃあ・・・」
何か言おうとしたの言葉を遮るようにロイは一言言った。
「何故君は何でも一人でこなそうとしているのだ?」
聞いた瞬間、何のことか分からなくて手にしていたナイフとホークを静かにお皿の上に置いた。何も言わないでいるとロイが話続けた。
「この前のスカーの時といい、ショウ・タッカー氏の時といい・・・君は何でも一人で片付けて誰にも迷惑をかけないようにしている・・・私にはそれが歯痒くて仕方がない」
「ロイ・・・」
「私も君と同じ国家錬金術師だ。ほかの軍人よりも力はある・・・それなのに、君は何も私に相談をしないで・・・」
「ロイ!」
「君は!いつも私がどんな気持ちでいたのか知らないだろう!」
バンッとロイがテーブルを叩いてを見据える。そんなロイの顔は初めてではビクッとした。
「私は君よりも年上でイシュヴァール殲滅戦のときに共に戦った・・・あの時はお互いをカバーし合って戦場を潜り抜けていた・・・それなのに、今はどうだ?何故私が君に守られている?どうしてが危ない目にあっているのに私は何も知らずにほかの部下に指示をしている?」
テーブルクロスを握り締めて苦虫を噛んだような顔をしてから視線を外す。は何も言えずに黙ってロイの話を聞いていた。
「君はあの時よりも数倍も成長をして、今は大将だ・・・私はまだ大佐。その差が痛いほど感じているんだ」
「それは・・・貴方のが弱いからじゃなくて・・・」
「しかし!私がどんなに頑張っても君は必ず私の前にいて私だけではなく、ほかの部下も守っている!私は・・・無力な人間なんだ・・・」
―無力な人間―
その言葉を聞いては何か記憶が頭を過ぎった。無意識のうちに一言口にしていた。
「無力なのは貴方だけじゃないわ・・・」
誰に言うでもなく、そう呟いていた。しかし、ロイには聞こえてしまっていたらしい。
「・・・?」
名前を呼ばれてはっとした。は『なんでもない!』と苦笑をしていた。
「ごめんね・・・今までロイの気持ちとか気付かないで・・・これからはロイにも頼ってみるから」
いつものような笑顔だったが、何処か影があった。しかし、ロイは今は追及しないでおこうと心に決めた。
「私も無理を言ってすまない・・・」
「ありがとうね、ロイ。その気持ちだけでも嬉しいよ」
笑顔で言ってまた食事を始めた。その後は、お互い今の会話に触れないように東方司令部の人達について話したりして楽しい時間を過ごした。
ごめんなさい、ロイ・・・
何も気付いてあげられなかったね
私はただ・・・
みんなに笑顔でいてほしかったんだ
あとがき
久々の鋼更新第一弾です♪
いやぁ…テストもしばらくなくてこれをチャンスと思い、こうして文字を打ってます(笑)
ストーリーは浮かんでるのに文字を打てない…というか、まとめられない!!
あぁ…もう文才がほしいです…(涙)
2005.02.05
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