黒い波 ―Vol.5―
ハボックは司令部内を走り回った。の姿を探すために。
「くそ・・・、何処に居るんだよ!」
仮眠室や他の部屋、そして食堂に屋上と隅々まで探したが見つからない。壁に手をついて少し身体を休めていた。
「ハボック少尉、こんなところで何をしている?」
聞こえてきたのは自分が探している声ではなく、自分の上司であるロイだった。
「た・・・大佐!?」
「疲れているのか?何をそんなに慌てて・・・!?」
「大佐!!」
ロイが聞いている途中でハボックはロイの肩に手を置いて名前を呼んだ。
「な・・・どうしたんだ?」
「そうじゃなくて!ヒューズ中佐に会ってないんですか!?」
「いや?今まで私は外にいたからな」
「じゃあ聞いてください!!今、を探しているんです」
「・・・仕事だろう。それがどうかしたのか?」
「ウィンス少佐についてのことです!」
「ウィンス少佐の?」
ロイはその名前が出てきて少し胸がざわついた。今までいつもの顔をしていたのに、真剣な顔へと変わっていた。ハボックはその様子を見て話を続けた。
「あのウィンス少佐・・・二日前、セントラルで誰かに殺されていたんです。ウィンス少佐はこのイーストシティの出身で、この事件の担当をしていたヒューズ中佐が詳しいことを調べに来ていて話を聞いたンスよ!」
「・・・!!!」
「だからそう言ってるんスよ!!」
やっとことの重大さに気付いてロイとハボックは走り出した。
「ハボック、もうこの中は探したんだな?」
「屋上まで隅々・・・」
「じゃあ後は図書館だ。急ぐぞ!」
「図書館・・・!本当にそこなら個室っスね!」
「そうか・・・急ぐぞ」
そんな情報を交換しながら二人は走りながら図書館へ向かった。
「な・・・んで・・・?」
「だから言ったっしょ?大切な人に会いにって」
ウィンスの正体がエンヴィーと知ったは顔を少し蒼ざめながら声を出した。そんなの様子を楽しむようにエンヴィーは笑って今度はテーブルに座った。
「、何でいきなり居なくなったりしたの?」
「・・・」
答えない。エンヴィーは質問を変えることにした。
「じゃあさ、何で軍人になったの?」
「・・・あの時話した」
「存在の証明?」
はそうだ、と言おうとしたとき、エンヴィーが立ち上がっての腕を掴んだ。
「の存在の証明は俺だけで十分じゃないか!!」
掴まれた腕が痛くて少し顔を歪めた。しかし、すぐに腕は放されて今度はの顔を挟むように後ろの壁にエンヴィーの両手が置かれた。エンヴィーの顔を見ると、笑顔が消えていて怒りと悲しみの入り混じった表情だった。
「どうして・・・いなくなったのさ!いなくなっただけならまだこんなに怒りを覚えない・・・けど、よりにもよって軍人なんかに!!」
「・・・エンヴィー、離れなさい」
「っ・・・、あんたは此処に居るべき存在じゃない。存在の証を求める場所を間違えてる」
「そんなことは・・・私が決める」
顔色が少し戻ったは震える手を我慢しながらエンヴィーを睨んだ。すると、エンヴィーは少し顔を俯けたが、少ししてすぐにいつもの笑顔になった。
「・・・それはあのロイ・マスタングの所為?」
「ロイ・・・?いきなり何?」
少し動揺したを見て確信をしたらしいエンヴィーはから離れて窓に近づいた。
「ふーん・・・やっぱりね」
「だから、何が!」
「あのロイ・マスタングが居るからは此処に居るんだ?」
「っ!!」
エンヴィーの顔が変わった。誰かを殺すような狂気染みた笑顔に。は嫌な予感がしていつでも出せるように用意しておいたキーホルダーに手をかけた。
「、今何をするってわけじゃないんだから」
「そうとも言い切れないでしょう?」
エンヴィーはが何をするか分かったらしく、そう言ってみたものの、本当のことだったので深く言わないことにした。
「まぁいいや。でもこんな風に俺と話をしてていいの?」
「何・・・?」
「、ドア見てみなよ?がそれを確認するまで何もしないからさ」
そう言ってきたエンヴィーの言葉を信用しきれないで距離を置きながらドアの方に視線を向けた。
「な!?」
ドアの隙間から赤い液体が・・・血が見えたのだ。
「エンヴィー!どういうこと!?」
その質問に答えないでエンヴィーはを見ていた。
走って図書館に辿り着いた二人は急いでのいると思われる個室へ向かおうとした。カウンターにいる人が静かに、と注意をした声にも構わず走り続けた。
「・・・大佐!」
先を走っていたハボックが慌てて声をかけた。ロイもその方向に視線を向けると。
「・・・グレニス少尉に・・・キューザ少尉!?」
そこには、血まみれの二人が廊下に倒れていた。ハボックは慌てて駆け寄り、脈を診た。
「まだ息がありますよ!」
「急いで医者を手配しろ!」
ハボックは頷いてその場を立ち去った。ロイはドアに手をかけるが、内側から鍵がかかっているらしく開かなかった。今すぐに錬金術でドアを壊したかったが、図書館ということもあってドアを強く叩いた。
「!!ウィンス少佐もいるのか!!?」
『!!ウィンス少佐もいるのか!!?』
ドアが激しく叩かれてその後すぐにロイの声がした。
「・・・ロイ!?」
「何であいつが此処に来てんだよ・・・」
エンヴィーの声がして驚いてその方向に視線を向けると、瞳に怒りの色を宿していた。はまずいと思い、エンヴィーに叫んだ。
「何もしないんじゃなかったの!?」
「誰も絶対なんて言ってないよ」
ロイは、少尉達をドアから離れた場所に寝かせてまたの居る部屋の前にやって来た。
「・・・!」
もう一度叩きながらの名前を呼んだ。
どうして私はこうなんだ!
重要なことは何も知らないで
分かっていたとしても
いつも一歩遅い
そんなことを思いながら必死にの名前を呼んだ。
ドアの向こう側からロイの声が聞こえているということは、すぐ側にロイが居るということだ。だったら尚更エンヴィーを止めなくては。
「エンヴィー!やめないと私も黙ってない!!」
それでも聞いていないらしく、エンヴィーはまたウィンスの姿に返信しながら歩くスピードを変えない。もう何も聞いてくれないと判断したはキーホルダーに手をかけ、自分の指を噛み切った。そして両手を合わせてキーホルダーを空中へ投げると、緑色の光が放たれた。
―ヒュッ―
何かが空中を駆け巡り、エンヴィーの頬に傷をつけた。それに気付いてエンヴィーは歩みを止めての方を向いた。そこには、今までにない怒りの表情がの顔に出ていた。
「エンヴィー!!これ以上何も・・・誰も奪わせない!!」
は練成したイタチの様な風を従わせてエンヴィーを睨んだ。
「私はもう・・・何も失いたくない!!」
あとがき
はい、いきなりな展開。
オレ…じれったい時と進む時の差が激しくて…;
皆様、疲れると思いますが、飽きずに読んでやってください…;
2005.03.18
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