ドリーム小説

黒い波 ―Vol.6―



 ドアの外にいたロイの耳にの声が聞こえた。





『・・・誰も奪わせない!!私はもう・・・何も失いたくない!!』






 少し悲しみの混じっている叫び声が聞こえて、我慢の限界がきた。ロイは発火布を装着していた。するとその瞬間。





―バァンッ―






 目の前のドアが開いた。ロイは何とかそのドアにぶつからずに済んだが、ドアの向こうからウィンスの姿があった。ロイは驚いてウィンスを見ていたら、その直後に何かが壁やドアを切り裂いていた。それは、獣の形をした風だった。これは紛れもなく・・・の練成。
っ・・・!」
ロイが声を上げると、ウィンスがロイに気付いて睨んだ。ロイは、その睨みに背筋が凍る感じがした。一瞬だけ油断していたら、ウィンスがこちらに銃を向けて攻撃をしようとしていた。ロイは避けようにも突然のことで身体が動かなかった。


























「じゃーね、ロイ・マスタングさん」

「!!」


























 逃げようがないと思ったロイはそのままウィンスを見るしかできなかった。死ぬかもしれない、そう思った瞬間。





―ドンッ―
何かがロイの周りに纏わり付いてその銃弾からロイを守った。ウィンスは後ろを向いた。その視線の先にはが立っていて息を切らしていた。





・・・!?」

「何で邪魔するんだよ、!!」





 ウィンスがに怒鳴っていた。しかし、も負けずに怒鳴る。





「コレは私とエンヴィーの問題!!ロイには手を出すな!!」

・・・関係あるさ。こいつがを此処に留めてる理由だろ?」

「違う!!ロイは関係ない!!第一、私の方が階級が上だ!私がロイに気を使う理由が何処にある!!」





 此処まで怒鳴るを見るのが初めてだったロイは目を丸くしてその様子を見ていた。の左手の指が動いた。すると、ロイを守っていた『モノ』の表面が突起物に変わってウィンスに向かって伸びていった。それを軽やかにかわしてウィンスは窓辺に立った。はウィンスを追うことをせずにいつでも攻撃できるように構えていた。





「・・・わかったわかった。今日はもう帰るよ。人も集まってきて俺も次の用があるからね」
ウィンスはそう言いながら残念そうにを見た。

























、いつかこんな檻から出させてあげるから」

「・・・私はいつでも外にいる」


























 はウィンスを睨みながらそうはっきりと言う。面白くなさそうにウィンスはを見て、ロイに視線を映した。
「ロイ・マスタング」
「貴様・・・」
ロイを睨む瞳を睨み返しながら声を出した。





「ウィンス少佐は二日前に死んでいるらしい。貴様は何者だ!?」

























「あんた、よくもを奪ったな・・・」



























 質問とは全く異なった言葉が出てきてロイは言葉を失った。

























「俺からを奪った罪は・・・重いよ」



























 あの狂気染みた笑みを浮かべて窓から落ちた。はウィンスの姿を確認しようと窓の外をみたが、そこには誰も居なかった。少しその場に立ち尽くしていたら、ハボックが戻ってきてその後ろに医者もいた。が医者達の向かう方向を見ると、そこにはグレニスとキューザの姿があった。いつもと違うのは血まみれだったこと。は驚いてその二人に駆け寄った。




「グレニス少尉、キューザ少尉!!」





 息はあったが、意識がないため、急いで担架で運ばれていった。それを見送って心配そうな顔をして俯いた。
・・・」
ロイの声がしては気が付いた。
「あ・・・ロイ、平気?怪我はない?」
「私は平気だ・・・それよりも、これは・・・?」
自分の周りにある『モノ』を見ながらロイが聞いた。
「・・・私の練成だよ。流石に二つ同時ってのは辛いね」
言いながらロイの周りにあるものを自分のところへ戻した。それは、樹木で出来た鳥だった。一瞬黄色い光が放たれたと思うと、その鳥はが持っているキーホルダーに戻っていた。もう一つ、イタチのような風も同時に戻っていた。キーホルダーを受け取ろうと伸ばされた手は空を切り、は倒れた。

!?大丈夫か!?」

 ロイはを抱えるが、は気を失っているらしく、目を開かない。
「大佐!これは一体・・・」
「ハボック、その話は後だ。それよりも今はを医務室へ運ぶぞ」
ハボックはロイに言われて医務室を確保するために走った。ロイもを安全なところに運ぶために走った。




















 医務室に着いて、ロイはの側にいた。気が付くまで側に居ると言ってハボックは図書館の捜査に向かった。顔の白いの頬にかかる髪を指でそっと退かしながらロイはの手を握っていた。











「・・・あの時、私を守ったんだな・・・」


























『ロイは関係ない!!
第一、私の方が階級が上だ!
私がロイに気を使う理由が何処にある!!』



























 そのときのことを思い出していた。自分はに・・・この18歳の少女に守られているという事実。情けない話だ。そしてもう一つ・・・。

















・・・関係あるさ。
こいつがを此処に留めてる理由だろ?』





『あんた、よくもを奪ったな・・・』





『俺からを奪った罪は・・・重いよ』





















 ウィンスと名乗る男のこと。あれはどういう意味だろうか・・・自分がを留めている?何から?奪う?あの男とは何か関係があったのだろうか・・・?色々な考えがロイの中に浮かんでくる。










「・・・ぅ・・・?」








 小さな声が聞こえてロイは顔を上げた。そこには赤い瞳を開けて天井を見上げているがいた。





・・・気が付いたか?」

「・・・ロイ・・・?私・・・」

「あのウィンスが居なくなった後、君は倒れたんだ。そして、医務室で治療を受けていた」

「そう・・・」






 は自分が気を失っていた間のことを聞いて気が付いた。ロイに手を握られているのだ。





「ロイ?手を離してくれる?」





「ん?もう少しいいだろう?私はこれでも心配したんだ」





 ふざけながら言っていたが、の手を握る手が少し震えていることが分かってしまってしょうがない、とはもう何も言わなかった。
「ロイ・・・迷惑をかけてごめんね?」
突然謝られて驚いたが、すぐに微笑む。
「いや、寧ろ私が謝るべきだろう?君は私を守ってくれたんだからな・・・」
「・・・そんなことないわ。こうなったのは、私の所為なんだから」
は申し訳なさそうにロイの手を握り返す。

























・・・」

「何?」

「君の過去に何があったのか・・・聞かせてくれるかい?」





















思い切ってロイはそう聞いてみた。すると、意外にもは頷いた。


























「そうね・・・ロイには話しておかなきゃこれから危ないかも・・・」




















はロイを見ながら過去の話を語り始めた。


















あとがき
 はい、『黒い波編』終了です!!
次の話は、ヒロインさんの過去の話です。
まぁ、色々あるんですね…人って(苦笑)
                                            2005.03.18


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