がアランを運んで行った後・・・。
「・・・・・・あーぁ・・・」
が放った錬成に光の筋が入ってガラガラと崩れていった。そして、雨に濡れた髪を掻き揚げながら一言呟いた。
「だから私は死なないって言ったのに・・・」
ソラリスはホムンクルス。普通には死なない。だからこうして立ち上がり、自分の仕事を終えたということで帰ろうとした。
「派手にやられたね〜?」
血だらけの服を着たソラリスに向かって明るい言葉で声をかける人物が居た。
「エンヴィー・・・居たの?」
「まぁね」
身体が濡れるのは構わない、というような足取りでエンヴィーはソラリスのところへやってきた。
「ていうかさ、あんたがそんなになるなんて・・・あの人柱って強かったの?」
「違うわよ。私をこんなにしたのはアラン・シーゼじゃなくて、一緒に住んでた女の子よ」
「はぁ!?女の子かよ!!腕落ちたんじゃないの?おばはん」
「うるさいわよ」
驚いたように言うエンヴィーの言葉が気に入らなかったのか、ソラリスはエンヴィーを睨んだ。しかし、そんなものは効かないようで、エンヴィーは立ち去ったと思われる道を見つめた。
「けど、これからどうすんの?」
「何が?」
「人柱。どうせ殺したんでしょ?ラストがさ」
「・・・多分死んでるわね」
エンヴィーの言う『ラスト』とは、ソラリスの本名らしい。エンヴィーはラストの言葉が気になって聞き返してしまう。
「多分って?」
「私を一回殺した女の子が何処かに連れて行ったわ」
「へぇ・・・そうなんだ」
「・・・多分・・・あの女の子は新しい人柱になると思うわ」
「女の子って言うんだから、そいつ・・・ガキなんだろ?」
「そうよ。けど、私を殺したのは事実だから」
「ふーん・・・ま、別に俺達の計画に支障ないんならいいけどね」
「エンヴィー?貴方にしてはまともな意見ね」
「・・・そんなに言うならそいつ見てきてもいい?」
突然の提案にラストは驚いたが、すぐに頷いた。
「余計なことはしないでよね?」
「はいはい、じゃ、こっちの方向だよね?」
そう聞きながらエンヴィーはラストに確認を取った道を歩いていった。それを見送りながらラストは傷付いた身体を癒すために自分達の居た場所へ帰ろうとした。
しばらく歩くと、エンヴィーの耳に何か聞こえた。雨の音でよく聞き取れなかったが、よく耳を澄ませてもう一度聞き取ろうとした。
『嘘・・・でしょ・・・?ねぇ、アラン!!』
悲痛な叫び声だった。エンヴィーはこんな雨の中で聞こえるんだからきっとその人物がラストの言った人柱なんだろうと思い、聞こえた方向へと歩いていった。なるべく気配を殺して近づくと、そこは小さな洞窟で、地面はぬかるんでいてあまり近づきたくなかったが、興味があったのでそこは我慢して歩くことにした。
「っと・・・あの子かな?」
入り口で人影を見つけたが、こちらから中を覗くと中からも見えてしまいそうなほど見通しがよかったのでエンヴィーは少し離れた場所で鼠に姿を変えて近づいた。エンヴィーは足早に近づき、その人影が何なのか分かった。横たわっている男は、以前人柱の情報の中にあったアラン・シーゼ。というこは、その側で泣いている奴が新しい人柱。顔を見ようとエンヴィーはその泣いている奴の前に回った。
「(・・・な・・・こいつって・・・!?)」
その新しい人柱の人間の顔を見て驚いた。ただの女の子ならまだこんなに驚きはしない。けど・・・。
『エンビー!!』
懐かしい声とともに、何か記憶が甦ってきた。それに耐えるようにエンヴィーはすぐに外にでてもとの姿に戻った。洞窟から離れて人のこない薄暗い森の中へ入って立ち止まる。
「な・・・んであいつが・・・?」
今まで忘れようとしていた記憶が鮮明になっていく。
『エンビー!』
やめろ
『だから、俺はエンヴィーなんだよ』
やめろ
『エンビィー?』
思い出すな
『おしいなぁ・・・エンヴィーだって』
思い出すな
『んー・・・エン、ヴィー?』
消えろ
『そ、正解♪』
「消えろよ!!!」
エンヴィーは止めたくても止められない記憶をねじ伏せるように近くの木を殴った。今まで葉っぱの上で溜まっていた水が一気に落ちてきてエンヴィーを更に濡らした。
「何であいつが此処に居るんだよ・・・」
忘れようとしていた記憶が甦り、その頃の感情が溢れてきた。
「やめろ・・・俺はもうあいつのことなんて・・・」
『ねぇ!エンヴィーは私のこと好き?』
やめろと言っても思い出してしまうあの女の子の表情や仕草、言動の一つ一つを。どうしてこんなに忘れることができないのか・・・理由はエンヴィーの中にあった。
『あぁ、好きだよ?お前は?』
『うん!私もエンヴィーのこと大好き!』
まだ忘れることのできない思い出・・・感情。どうしようもないほどあの女の子を求めてしまう。人柱として扱わなければいけないのに。人柱はいずれ死んでしまうのに。
「何で俺は死ぬって分かってる奴なんかを気にしてるんだよ」
エンヴィーは珍しく悩んでしまった。けど、そんな時間は長くなかった。
「エンヴィー。お父様が呼んでるわ」
「・・・わかった」
ラストが呼びに来たのだ。エンヴィーは今まで悩んでいたことがばれないようにいつもの態度に戻した。
「そういえば、あの女の子を見てきたの?」
「・・・あぁ、まだ小さいじゃん」
「実力は確かよ」
「そういえば、あの人柱、名前は何?」
「確か・・・ちゃん、って言ったわ」
「・・・か」
エンヴィーはやっと聞けた名前を忘れないように心の中で何回も囁いた。いつか会ったとき、あの子のことを呼べるために。
次に会ったのは、がイシュヴァール殲滅戦に借り出された時だった。エンヴィーはある仕事でその殲滅戦に潜んでいた。簡単な仕事だったのでエンヴィーはすぐに片付けてつまらない、と思って帰ろうとした時。
「危ない!!」
誰かの声が聞こえたと思ったとき、エンヴィーは押し倒されていた。それに驚いたエンヴィーだったが、プチパニックになっていて身体が固まっていた。その間、エンヴィーを庇った人物は銃を上手に扱い、今攻撃してきた人物を殺していった。
「貴方、大丈夫?」
「・・・は?あ、あぁ・・・」
「よかった・・・」
その安心したような表情が過去の記憶と重なった。そう、この目の前にいる人物が自分が探していた人物・・・『』だった。
「君・・・?」
「え?確かに私は・ファミリアですけど?」
見つけた!幸い、エンヴィーの姿はあの見慣れたいつもの姿。始めてと会ったときもこの姿だったから覚えているはずだと思い、思いっきり話し始めた。
「俺のこと覚えてる?」
「・・・何処かで会いしましたか?」
「ほら、君の小さい頃!」
小さい頃、と言ったとき、の表情が硬くなった。エンヴィーは笑顔のまま、どうしたの?とを見つめた。すると、驚くべき答えが返ってきた。
「私、記憶喪失らしく、小さい頃のことがわからないの・・・」
分からない・・・その言葉が酷く重く感じた。いつ頃から覚えていないのか知りたくなって、自分がを再び見かけた時のことを聞いてみた。
「は・・・アラン・シーゼって人知ってる?」
「っ!アランの知り合いなの!?」
アランの名前を出した途端、表情が明るくなった。その表情はエンヴィーが求めていた表情。しかし、その笑顔はエンヴィーに向いていない。記憶の中のアランに向けられていた。
「ねぇ、貴方、アランとどんな関係だったの!?」
楽しそうに話すを見てエンヴィーの中の『何か』が動いた。
「俺は・・・アランを殺した人物の仲間だよ」
わざと明るく答えた。すると、の表情がだんだんと暗くなって、最後には怒りだけが残っていた。
「貴方・・・ソラリスの仲間なの!?」
「ソラリス?あぁ、ラストおばはんの偽名か・・・」
「偽名・・・ってことは、ラストっていうのが本名?」
「まぁね」
「・・・でも、貴方はアランに直接は・・・」
「俺がアランと話をしてラストを紹介したんだよね〜」
「っ!」
はふざけた態度のエンヴィーに腹が立って、銃を発砲した。それを腕に受けたエンヴィーだったが、ホムンクルスのためにすぐに再生した。は驚いたように目を見開いてエンヴィーを睨んだ。
「お前も・・・ホムンクルスか!?」
「へぇ、流石だね・・・人柱の♪」
「人柱・・・?」
「そ。アラン・シーゼが死んだから代わりにが入ったんだ」
「私はそんなのにならない!!」
言いながら銃を再度発砲したが、今度はその全てを避けてエンヴィーは高い建物の上へ立った。
「俺はエンヴィー。もし、俺を殺したかったらそれまで生きなよ?この戦いを勝ち抜いて、俺のところに来て・・・それからアラン・シーゼのところに行きなよ?」
「エンヴィー・・・お前も・・・お前の仲間も私が殺すから!それまでお前達も生き続けろ!!」
怒りに満ちたの瞳にエンヴィーはぞくぞくした。それは、自分に向けられているものだったから。
今のの眼は俺のモノ
今のの感情も俺のモノ
は俺を殺すために生きる
それは
の命は俺のモノということ
の存在理由は
俺を殺すこと・・・
の存在理由は
俺だ
もう
の全てが
俺のモノ
あとがき
はい、新しい話…というか、今までの補足?みたいなものです♪
少しずつ、少しずつここから変わっているという感じです。
そして、前回の話から何かが始まる…かも?
2005.05.02
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