―運命―



 毒蜂が来なくなってからも毎日同じ場所で同じ時間現れていた。だが、それがもう何週間も続くといやでももう毒蜂は戻ってこないと実感させられる。そんなある日。
「・・・ここにいても仕方ないか・・・」
はあることを決意した。
「毒蜂は居ない・・・てことは、毒蜂を越える奴がいた」
そいつを殺せば・・・。





 それは、敵討ちとか復讐とかそういうものではない。ただ、自分が超えられなかったものを超えた『ソイツ』を超えるためだった。
「そうと決まればこんなところで油売ってるわけにはいかない・・・」
重い腰を上げてはその場を後にしようとした。















―ニャー・・・―















 何処からともなく猫の声がした。辺りを見ても見当たらなかった。だが、足元に何か温かいものを感じると思ってみたらそこにいたのだ。
「ちょ・・・あんた?」
何度も振り払おうとしてもその黒猫はから離れない。仕方なく、はしゃがんで黒猫に説得しようとした。
「・・・あのねー、あんたみたいな気まぐれ猫に構ってる暇はないんだよ。分かるか?オレは、これからやらなきゃならないことがあるんだって」
何でこんな黒猫に説明しているのか分からなかったが、そうしないと納得してくれないような気がしてならなかったのだ。一方、黒猫はそんなの心境なんて知らないと言った感じで更に懐いてくる。そんな様子を見ては溜息を付いた。
「はぁ・・・わかったわかった。お前『連れて行け』って言ってるのか?」
そう聞いてみると、を見上げて『ニャー』と満足そうに鳴いた。そこまで来ては思った。















「・・・オレとお前って気が合うのか?」



























 は、昔から心が通じ合う相手には何故か言いたいことなどが分かるのだ。今回も、この黒猫が何で自分の側を離れないか頭で分からなくても『心』で理解していた。猫だけじゃなく、犬や鳥にまでこの不思議な力は有効なのだ。
「なーんでこんな猫と波長が合うんだよι」
頭を抱えていると、黒猫が『何て失礼な!』と言うようにの服を噛んだ。
「あーあー、悪かったって。別にお前は悪くないもんなー」
機嫌を直すために頭を撫でてやると、満足そうにに撫でられ続けた。なんだかんだ言ってもやっぱり猫は可愛いものだと悔しいながらは思った。
「そうだ、お前の名前何にしようか?」
流石に『お前』とか『猫』ってのは分かりづらい。黒猫もそれには賛成らしく、をじっと見つめた。










「えっと・・・!お前の名前は『』!」










 『』は何で?と目で訴えた。それを見ては満足そうに説明を始めた。
「だって、お前の目って綺麗なんだよ・・・うん、ぴったりだな」
その説明が気に入ったのか、は嬉しそうにの肩に乗った。はそんな月の頭をまた撫でた。
「さて、そんじゃ・・・行くか?
新しくできた相棒に意見を聞くと『当たり前!』と言うかのようにの後を追った。

























 「・・・って出てきたのはいいけど・・・どうやって捜そうか」
あまり手段を考えていなかった。普段はしっかりしているのに、時々こうやって抜けているところがあるのだ。そんなの様子を見てそれまで隣を歩いていたが突然走り出した。
「あ、!?何処行くんだよ!」
は驚いての後を追った。















 暫く歩くと、ある喫茶店の前でが止まった。がその喫茶店の前に着いたのを確認して月はの肩に戻ってきた。
「まぁったく・・・?何ここ?ホンキー・・・トンク??」
初めて見る喫茶店の名前を言葉にしたら、の髪をが引っ張った。
「何?」
『この中に情報があるよ』とに伝えて中へ入れようとしていた。は何の手がかりもないのでしょうがなく店内へ入っていった。











―カランッ―
ドアのベルが軽快に鳴った。
「いらっしゃい・・・」
静かに流れるBGM。それに、落ち着いた雰囲気に中の構造。カウンターにはサングラスをしたバンダナのマスターが新聞を読んでいた。
「(こういう静かな雰囲気・・・結構好きかも)」
「まぁ、入り口に立ってるのもなんだから中に入りなよ」
中を見回していると、マスターが声を掛けてくれた。は曖昧な返事をしてカウンターに座った。
「・・・ん?その仔、君の猫かい?」
「あ、悪ぃ。ここってペット禁止?」
「いや、特にそう言ったことはないから気にしなくていいよ。他に客も居ないしな」
優しく言ってくれた。だが、ここで一つの疑問。
「ちょっと?ここで何をすればいいんだよ」
椅子の下にいるに声を掛けてみた。すると。
『だから、ここで情報を手に入れるの。マスターにそう言うこと聞いてみなさいよ』
何とも偉そうな態度で言われてその直後、そっぽ向かれた。は多少怒りを覚えたが、そこまで言うならとマスターに声を掛け始めた。
「あー・・・マスター?」
「何だい?」
「ここで・・・色んな情報って手に入らない?」
そういうと、それまで新聞に落としていた視線をに向けた。その時の顔は、先程自分に声をかけた顔ではなく、もっと別な顔をしていた。
「・・・物によるね」
何とも曖昧な・・・だが、此処までくればなんとなく予想はつく。はそのまま話を進めた。
「あんた『毒蜂』って奴知らない?」
「『毒蜂』・・・ちょっと待ってな」
そう言うと、少しだけ顔を歪めたマスター・・・何かあるな?そんなことを思っていたら、何処からともなくノートパソコンを取り出してカタカタとキーを打ち始めた。手馴れた動きに驚いたが、すぐに『こういう』仕事をしているのかと分かった。
「・・・あった。こいつは・・・」
「あ、分かった?そいつ、最近・・・ってか、数週間前に誰かに殺されたのよ。誰か分かる?」
「殺されたって・・・物騒なこと言うね?」
「まぁね。それより、分かるのか?」
「いや・・・残念ながら今の段階では何とも言えないな」
「・・・分かった。ありがとな」
いい情報はなかった。いや、情報はなかったが、何か『確信』はあった。そう思ってこの喫茶店をあとにしようとした。





「待ちなよ」





 呼び止められた。マスターはパソコンを端に寄せて笑顔で聞いてきた。
「あんたの名前、何て言うんだい?」
「は?オレの?」
「そ。またここに来てほしいからね。ちなみに、俺は王波児」
確かにこの店の雰囲気が好きだから来ようと思っていた。
「オレは
そう言ってはドアをくぐって行った。誰も居なくなった後、波児はまたパソコンに向かった。
・・・・・・!?まさか!」





















 ホンキートンクを出て宛てもなく裏路地を歩いていた。
「まさか喫茶店のマスターが『この世界』の人間だとはね・・・」
『私の知ってる人物がよくそこを訪れていたから知ってたのよ。それで、この後どうするの?』
「ん?んー・・・何か知ってるはずなんだけど・・・あそこまでして言わないんだったらしょうがない。あとはまた別の情報屋とか・・・」
そこまで言っては言葉と動きを止めた。それに倣っても止まる。何だか冷たい空気が漂う。
・・・気をつけてね」
『今日知り合ったばかりだけど、バカにしないでよね』
暫くその状態は続いた。だが、は一番何かが『感じる』場所に目を向けた。すると、そこに居たのは・・・。


























「久しぶりだね、




























 静かに現れてきたのは、白いスーツに片方だけのピアス。そして、何だか嫌な雰囲気を醸し出す笑顔・・・。
「あんた・・・鏡形而?」
「やぁ」
「何であんたが此処に・・・」
「やだなぁ。何って、君を捜してたんだよ」
いつもの笑顔でそう言ってくる。鏡が一歩近づくと、は一歩退いた。いつまでたってもこのままだと思った鏡は足を止めた。
「さ、観念して俺と来てよ」
ゾク・・・と背中を何かが通るのが分かった。それに負けじとは鏡を睨んだ。
「バカ言うな。オレはやらなきゃいけねぇことが・・・」
「あの『毒蜂』を倒した犯人探しかい?」
思いもよらない言葉を聞いて珍しく驚きを表情に出した。そんなをクスクス笑ってみていた。
「俺は知ってるよ?その犯人」
「・・・誰だ?」
「そんなに知りたいの?」
「さっさと言え。オレに殺されたいのか?」
鏡に負けず劣らずでは殺気を放った。またそれが面白いのか分からないが、鏡は笑った。
「そんな風にしなくても教えるよ。その方が俺も楽しめそうだし・・・」
「お前の戯言はいい。早く言え」
「・・・『奪還屋・ゲットバッカーズ』の美堂蛮」
「美堂・・・蛮・・・?」
名前を覚えるように鏡の言葉を繰り返す隙を見てに一気に近づいた。
「あとは自分で探しなよ、?」
耳元で囁かれて思いっきり殴りかかる。だが、あっさりと避けられて姿をくらました。そんな鏡にムカついたのか、は声を荒げてに『行くよ!』と言った。は仕方ないといった感じでに付いて行った。
「さぁ、君はどんなことを『観察』させてくれるのかな?
新しいおもちゃを見つけて喜んでいるかのように笑いながらの後姿を見送った。





















さぁ、運命は動き始めた




もう誰にも止められないよ?




勿論この・・・






『無限城の神』でさえも・・・ね?

















あとがき
 はい、改装と同じ日に更新したこのGBU…。
鏡さん大好き管理人がまた勝手に鏡さんを出しました。
えぇ、あんた出すぎとでも言いたくなるくらいに。
それでも、お話はとめどなく続く…。

なんちゃって★
                                  2004.09.22

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