運び屋 後編
「・・・確かこのあたりだけど・・・」
とは、夜に近い夕方・・・待ち合わせ時間よりも早くに着いてしまった。その場所は、無限城の居住エリアだった。あたりは色々な音と、密売、その他無法なことばかりが起こっていた。
『此処ってこんなに酷いところなの?』
が嫌だなぁ・・・と言う顔を浮かべながらそう聞いてきた。は顔色変えずに自分の歩く先だけを見ていた。
「あぁ、けど“昔”の方が酷かったよ」
『・・・?』
小さな声だったが、の耳には届いた。顔を上げようとしたら、突然が止まってその足に当たってしまった。
『たっ・・・』
何か聞こうとしたが、視線の先から嫌な匂いがした。これは・・・。
「血の匂いだ・・・」
が声を発すると共にと走りだした。向かう場所はわかる。それほどまでに酷い血の匂いがする・・・ということはかなりの生き物が殺されている証拠だった。走るたびに血の匂いが増してくる。
「がぁ!!」
誰かの呻き声と共に何かが落ちる音が聞こえた。とはある一角を曲がって立ち止まった。
―ピチャ―
が一歩踏んだ時、水の音が聞こえ、足元を見た。
「な・・・」
血が流れていた。
『!』
が叫んでも自分の足元から顔を上げた。そこには驚く光景があった。
まさに『血の海』といったものの中心で佇む人間。しかも、その人間は真っ黒い服に身を包み、手には血に染まったメス、白い肌・・・そして、こんな惨劇の中で薄く笑う表情。月をバックにしているその姿はまさに幻想・・・。
「・・・このようなところに女性ですか?」
見ていた達に気付いてその人間はまたクス・・・と笑って帽子を被り直していた。まるで何も無かったかのように歩き始めた。その人間が近づくと分かってきた。性別は男性。そして、意外と細身でしかも麗人だ。
「よく此処まで来れましたね?」
「あぁ、そうだな」
は足元にまで来る血を見ながらそう答えた。
「・・・コレ、全部あんたがやったの?」
「そうですけど?」
あっさりと言うこの男に呆れながらもは今まで人だったと思われる欠片を避けながら歩いた。そんなを見て男はクスリ・・・と笑った。
「何?」
「貴女はこの状況を見て何も思わないのですか?」
まぁ、当然の質問だろう。普通の人間ならば怯えて歩けなくなるか、逃げ出すかすると思われる。しかし、このはそれを日常だろ言わんばかりに普通に受け入れているのだ。コレを疑問に思わずにいられるだろうか。
「何、怯えて欲しいの?逃げて欲しいの?」
「いえ、そういうわけではありません。ただ、珍しいと思いましてね」
「何で?此処は無限城だ。何が起こってもおかしくないだろう?」
あまり血が来ていない瓦礫の上の方まで行くと、はその男に向き直った。
「あんた・・・赤屍蔵人だろ?」
突然その男にある人物の名前を言った。男は驚いたような表情をしていたが、本心ではないようだ。はそれを知ってても気にせずに返事を待った。
「えぇ・・・私は赤屍蔵人ですが?」
「ならいいんだ。ほら、依頼品は何処だ?」
「・・・え?」
何だか話がかなり進んでいる。流石の赤屍の思考もそれに追いつけない。
「だから、あんたさ・・・依頼品ここに持ってきて別の運び屋に渡すんだろ?」
「まさか・・・」
やっとわかったかと思いながら名前を言う。
「オレは。運び屋をやっていてあんたの依頼品を引き継ぐことになってる」
「貴女が・・・さんでしたか・・・」
何か楽しそうに笑う。そんな赤屍を見て何がおかしいのか分からなく、と顔を合わせた。
「・・・何が面白いんだよ?」
「あぁ、これは失礼しました・・・ただ、噂とは程遠いと思いまして」
「噂?」
は周りのことは結構知っているつもりだ。知り合いに情報通がいるのだから。しかし、周りからどう思われてるなんて気にしないたちなので自分に関しての噂が立っているとは思ってなかった。
「えぇ、・・・この世界での通り名は『光の刹那』です。何か光を見たと思った瞬間、貴女の周りの人間は・・・」
「もういい」
赤屍がその先を続けようとしたが、止められた。は機嫌が悪いと主張するかのように赤屍を睨んだ。
「それよりも、早く仕事を済ませたいんだ。さっさと依頼品をこっちに渡せ」
面倒くさそうに手を出す。赤屍も『あぁ』と思い出したように依頼品を出す。それを見ていたはのズボンの裾を引っ張った。
「何?」
『あの人、私知ってるわ。知り合いが『危険だ』とかそんなこと言ってた・・・気をつけなさいよ?』
「・・・わかってる」
忠告を受けていると、赤屍が側まで来ていた。
「どうぞ」
「あぁ」
意外と小さかった依頼品を手にした瞬間。
―グイッ―
「!?」
身体が前へと引っ張られた。瓦礫の上だったのでバランスをすぐに崩してしまったが、それを前にいた人物が支えた。いや、もともとこの人物が自分を引っ張ったのでお礼など言うはずがない。
「やはり軽いですね」
「・・・何すんだよ」
「いえ・・・ただ貴女は何者か知りたくなりましてね・・・」
「はぁ?」
「クス・・・今日は仕事ということでお会いしましたが、今度はプライベートでお会いしたいですね」
言いながら赤屍はの手に口付けをしようとしたが。
「・・・!?」
目の前にはではなく、先程から見えている月があった。
「生憎だけど、オレはあんたに興味がない」
声は赤屍の上から聞こえた。そこには予想通りが立っていた。見上げたときのは赤屍を見ていた。
「じゃ、これでお互い仕事完了・・・って言ってもオレはこのあとコレを運ぶんだけどな」
じゃあな、と軽く言って立ち去った。赤屍は呆気に取られるばかりでそのまま佇んでいた。
「・・・ククッ・・・」
帽子を被りなおして赤屍もと同じように立ち去った。
「・・・『光の刹那』ですか・・・」
何か面白くなりそうな予感を胸に秘め、そのまま闇の中へ消えていった。
あとがき
後編終了〜!!
というか、赤屍さん登場おめでとうございます!!
赤屍…これからも頑張ってください…勿論、ヒロインさんもです♪
2004.09.26
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