すみませんでした・・・さん
黒と白 Vol.4
真っ白い毛並みは今では真っ赤になっていて・・・以前の私でしたら真っ赤になってもなんとも思わなかったのに、さんが真っ赤に染まると・・・胸が締め付けられるような痛みを感じました。
「ジャッカル、その子は?」
「さんです・・・私が大切にしてきたもの・・・」
声が震えていることが自分でも分かりました。それほどまでに私は感情的になっているのでしょうか・・・こんな怪我をしてもまだ私に擦り寄って来て、以前と何も変わらない・・・変わったのは、怪我をし過ぎて毛並みが赤くなってしまっただけなのです。
「何故・・・アナタは私を庇ったんですか!?それに、何故此処に居るんですか!」
鏡クンに負わされる怪我の前にも沢山怪我をしていることが分かりました。何処か高いところから落ちたのか、肋骨が何本か折れて、爪ももうない状態で・・・一体どんな状態でどうやってきたのかが不思議です。そう思いながら見ていると、さんは何かしようと腕を伸ばしていました。その先を見ると、私が持っているフロッピーと同じものがあったんです。
「・・・これを私に届けてくださったんですか?」
仕事で使うもの・・・私が忘れたと思って届けてくださったのですか?私が困ると思って届けてくださったのですか?そんな姿になってまで私の為に来てくださったのですか?
「アナタは・・・どうして・・・」
『そんなに優しいのだろう・・・』と言葉に出来なくてたださんを抱きしめていました。私なんかの為にこんなになってまで一生懸命に・・・だから私はさんを愛おしく思うんです。今まで抱きしめたことはなかったのですが・・・いつも思っていました。頭を撫でる手から伝わる温もりがあれだか温かいのでしたら・・・抱きしめるともっと温かいんですか?と・・・しかし、始めて抱きしめた身体は・・・・・・だんだん温もりを失っていく冷たさしか感じませんでした。
「さん・・・さん!」
抱きしめて分かる呼吸の少なさ・・・もう死が近いという証拠。そんなこと、私がさせない・・・まだ・・・失うには早過ぎます。
「早く家に帰りましょう・・・まだ約束を果たしてませんよ?」
私の呼びかけに気が付いたように目を開けるさん。しかし、その瞳には以前のような明るい光は宿してなく、何か言いた気に口を動かしているが、声には繋がらない。
「さん・・・行きましょうね・・・」
助けたくて・・・さんを助けたくて仕事なんて気にしていられません。前足や心臓の動きが鈍ってきていました。
「私を庇ってくださってありがとうございます・・・さん」
本当に感謝の気持ちを込めてさんを抱きしめながら言った一言。すると。
ニャー・・・
『ありがとう・・・』
一瞬だけ鳴いた声・・・その言葉はただの鳴き声でしたが、心の声が聞こえた気がしたんです。その声を最後に・・・さんは動かなくなりました。
「・・・ジャッカル、君はフロッピーを持っていなかったのかい?」
「いえ・・・此処にあります」
私は。さんを抱きしめながらフロッピーを鏡クンに見せました。
「じゃあ・・・その猫は勘違いを?」
「・・・」
私は何も言えずに立ち上がり、鏡クンに仕事のフロッピーを渡してさんが届けてくださったフロッピーをポケットに入れました。
「ジャッカル、いいのかい?」
「今は仕事をしている気分ではありません」
さんがいなくなった事実。それを受け入れるだけで精一杯なんです。私はいつからこんなに弱くなったのか・・・いつからこんなにさんを大切に思い始めたのか・・・そんなことを考えながら自分の部屋に戻りました。
部屋には、さんがいた証がいくつかありました。
壁の傷
食事をする器
さん愛用のクッション
お気に入りの遊具
それらを使っているさんの姿が鮮明に思い出されてまた冷たくなったさんを見てしまいます。
「・・・さんは・・・幸せでしたか?」
もう聞けない答えだと知っていても口にしてしまう・・・さんは、私にとってかけがえのない大切な存在になってました。
さん・・・
愛してますよ
あとがき
赤屍バージョン最終回でした!!
いや…赤屍さんが仕事のことよりもヒロインさんを選ぶなんて…予想もしてませんでした(ぉぃ)
次に最後の一話があります!!
2005.07.24
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