この雨はいつかは止む・・・

けど・・・

『この雨』は止まない






―RAIN―








 ある屋敷から大きな爆音が響いた。
「ははっ!今回も奪還成功だな!!」
「ちょっと!まだ気を抜かないでよ」
今回の仕事は、奪還だったが屋敷が広すぎるので蛮・銀次・士度、そしてこの蛮とあまり年齢の変わらない女性、の四人で実行された。は裏家業で『何でも屋』をやっている。女性一人でやるということもあってかなりの戦闘能力を持っていた。蛮は裏で働いていても明るい笑顔を自分に向けてくれるが好きだった。今回は、士度と銀次が屋敷の中へ入って奪還品を奪ってくるのでそれまで警備の気を引く・・・つまりは目立つところで大暴れをするという作戦(?)が立てられた。そしてたった今、いつでも連絡を取れる小型通信機から『奪還終了だよ!』と元気のいい銀次の声がしたところだた。
「けど、あとは俺達が脱出するだけだろ?簡単じゃねーか」
「この人数を相手にすんだよ?一瞬でも気を抜いたら死角から攻撃されるよ」
蛮に説教をしながらでも確実に敵を倒していく。一体、こんな華奢な身体の何処からそんな力が出てくるのかを考えながら蛮も闘っていた。




「・・・ねぇ!聞いてる?人の話!」

「あー、聞いてるって・・・」

「じゃあ、敵に囲まれたのも聞いてたの?」

「・・・え」





 周りを見ると、本当に囲まれていたのだ。は溜息を付きながら蛮と背中合わせになった。隙を見せないためだ。
「まったく・・・だから気を抜くなって言ったのに!」
は蛮を睨みながら言ってきた。
「だー!俺が悪いのか!?」
「あぁ・・・もういいからさ、早く脱出しようよ!流石に疲れてきたし」
「だったら俺の邪眼で・・・」
「そんな暇ないでしょ!」
容赦なく襲ってくる男達を倒しながらは叫んだ。
「喋る余裕がまだあるじゃねーか!」
の方を見た蛮は一瞬驚いた。大人数の中、は軽やかに攻撃を受け流して逆にその力を利用して攻撃を仕掛けていた。不覚にも蛮はそんなの姿を綺麗だと思った。
「・・・っ蛮!!」
いきなりの表情が変わったと思ったら蛮の方へ向かった。そして、は蛮を突き飛ばした。





―ドッ!―





 鈍い音がした。それと同時に蛮はと共に倒れた。
「・・・っってーな!!」
「あんたねぇ!油断しちゃ駄目なの!!」
はすぐに立ち上がって蛮を攻撃しようとしたと思われる男に蹴りを入れてまた戦闘体勢に戻った。その行動を見て蛮も戦闘に集中した。

















―サァァァァァァ・・・―















 雨が降ってきた。今まで騒がしかった場所にはもう蛮と以外は誰も動いていなかった。そう、屋敷の警備の奴等はもう全員倒したのだ。蛮は『疲れた』と一言呟いて少し離れたに視線を向けた。
「おい、!平気か」
しかし、は黙って佇んでいた。蛮の声は屋敷中に聞こえそうなほど大きかったはず。もう敵もいなくなって逃げなくてはいけないというのには動こうとしない。もうイラついてきた蛮はに近づいた。
、聞いて・・・!?」















よく見ると、の背中が紅くなっていることに気が付いた。










「あぁ・・・蛮・・・」










 蛮の姿を確認してはほっとしたように微笑んでその場に膝から崩れていった。
「おい・・・!!」
地面に身体全体が付く寸前に蛮はを支えた。そして、手当てをしようと安全な場所まで移動を始めた。


























 屋敷から離れた裏路地まで来て周りの安全を確認してからを休ませて質問をした。
「お前・・・いつそんな大怪我したんだよ・・・」
「あはは・・・ごめん。蛮にあんだけ説教しておいてその私がこんなヘマをして・・・」
地面が紅くなるほどの出血。相当痛いはずなのには笑っていた。何故こんなときまで笑っているのかわからず蛮はつい声を大きくした。
「そんなこと・・・!?」
『そんなこと聞いてない!』と言おうとしたが、蛮は一つ思い当たることがあった。
・・・まさか・・・」
嫌な予感がする・・・外れていることを祈りたい・・・。

























「俺を庇った時・・・か?」


























 驚いたような顔をした後、すぐには気まずそうに微笑んだ。もうそれは確信。自分の所為ではこんなケガをしたんだと・・・蛮の怒りが一気に上がった。



「な・・・んで!何でそんな余計なことしたんだよ!俺は・・・!」
そう怒鳴っていると、が蛮の頬に手を添えた。

「知ってる。蛮がそんなことされても嬉しくないってことくらい・・・」

「じゃあ!!」

「それでも・・・私は蛮を守りたかった・・・」



 頬に当たるの手が冷たくなってることに気が付いて蛮はの手を握った。はその行動が嬉しかったらしく優しく笑う。



「蛮には・・・生きてて欲しかったから・・・蛮は必要とされてるし・・・」

「そんなことねぇよ!お前の方が俺よりも必要とされてるじゃねーか・・・!!」



 最後の方の声が震えた。それは、の焦点が合わなくなってきていたからだ。もうこれ以上はやばいと判断した蛮はを医者のところへ連れて行こうとした。



「駄目・・・」



 それを止めたのは顔を蒼くしただった。



「おい!離・・・」

「駄目だよ・・・今から医者のところへ私を連れて行ったら銀次達に迷惑がかかる・・・」

「そんなこと言ってられるか!」



 怒っているのか悲しんでいるのか・・・いや、その二つが混じった様な顔をしている蛮に声をかけた。










「・・・蛮」










 名前を呼んだらまだ何か言おうとした蛮の口を自らの唇で塞いだ。突然のことで驚く蛮だったが、違和感を感じた。が異様に冷たいのだ。それは、この日の天候は雨。その雨がの体温を奪い、その上出血も酷い。その所為での身体は氷のように冷たかったのだ。
「ねえ・・・蛮・・・」
の手が下へ落ちようとしたとき、離さないようにしっかりと握り直す蛮。その手はやはり唇と同じく氷のように冷たい。しかし、何故かの微笑みは太陽のように暖かくて・・・そんなから眼が離せなかった。
「あのね・・・最後に・・・蛮に伝え・・・たいこと・・・が・・・あるの・・・」
「何だ・・・?」
『最後』と言う言葉を聞いて最悪な状況が思い浮かんだ。不安そうな顔をする蛮の瞳には自分を映しながら囁いた。
「・・・私ね・・・蛮のこと・・・好きだった・・・ううん、愛して・・・るよ?・・・だからね、今まで・・・一緒に居られて・・・・・・幸せだった・・・んだよ・・・・・ありがとう・・・」
は今までに見たことの無い最高の笑顔で一言・・・。

























『蛮・・・愛してる・・・』





















―それから、は二度と動かなくなってしまった―










自分を好きだった?



自分を・・・愛してた?



一緒に居られて幸せだった?












 蛮はもう一度を見た。そこには幸せそうな顔で・・・ただ眠っているようにも見えるがいた。
「・・・・・・?」
顔に張り付く髪をどけてやったとき、蛮の手にの顔が当たったが・・・以前のようなの体温は感じられなかった。そこで少しずつ認識し始めた。





はもう・・・二度と・・・!!







「ぅあ・・・あ・・・!!」






蛮は言葉に出来ないほどの悲しみと怒りと後悔を感じていた。










を失った悲しみ



を守れなかった怒り



に・・・自分の気持ちを言えなかった後悔



そして・・・自分の弱さと愚かさ。












・・・!!・・・っぅ・・・・クソッ・・・な・・・・んで・・・・・・っ・・・!!!」





 冷たくなったの身体を抱きしめながら蛮は何度も何度も狂ったようにの名前を叫んだ。










「・・・っどうして・・・・・・何であんな・・・・・・言うだけ・・・・・言って・・・!!・・お・・・俺・・・・・俺は・・まだ何・・・も・・・・・言ってないのに・・・!」


























 どのくらい経ったのだろうか・・・の温もりを奪うだけ奪った冷たい雨は何処かへ消えていた。





・・・」





 雨は止んだはずなのに・・・もう一つの『雨』はまだ・・・いや、もう止むことはないだろう。










・・・っ俺も愛してる・・・」










 蛮の正直な言葉。しかし、その言葉はもう一番届けたかった人・・・には届かない。蛮はの幸せそうな顔に涙を零しながらそっとキスをした。















その姿はまるで誓いのキス・・・


























天上の雫はいつか止む



けど・・・










『心の雫』はもう止まない

























あとがき
 わー、短編だよ!
しかも、ヒロイン設定無し♪

この作品は、以前某サイトで投稿したものを手直ししました。
自分…なんて物を書いてるんだ!!
とか
ヒロイン死なせるなよ!!
とかツッコミながらUPしました(笑)

こういう…設定無しの作品の感想も頂きたいなんて思ったりなんかしちゃったりして。

                                  2004.10.10



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