貴方は、知ってますか?





私がどれだけこの日を待っていたことか










幸せ?












 此処はホンキートンク。いつもと言っていいほど頻繁に通っている喫茶店。私は今日も来ていた。
「ねぇ、ちゃん・・・」
「何?銀ちゃん」
「何だか機嫌悪くない??」
「・・・そんなことないよ」
私は笑顔でそう言った。けど、銀ちゃんはまだ怖がっていた。機嫌が悪い・・・確かに私の機嫌は良いとは言えない状態にあった。
 それは、数日前






 ―ピピピピピピ・・・―





 部屋で寛いでいたら携帯が鳴った。ディスプレイを見ると、そこに表示されていたのは私がもっとも愛する人物、赤屍蔵人の名前。
「・・・っもしもし!?」
滅多に来ない電話に嬉しさと緊張で声が裏返りそうになった。その声を聞いてだろう、赤屍さんはクスクス笑っていた。
『そんなに焦ってどうかしましたか?』
「あ・・・いえ///それよりも赤屍さん、今日はどうしたんですか?電話なんて珍しいですね・・・?」
『えぇ、メールを打つ暇がなかったのもで・・・』
きっと仕事中なのだろう、電話の奥で何か物々しい音が聞こえていたのだ。
?』
「あ、何ですか?」
『その・・・今の仕事が思うように進まないようで・・・仕事が長引くかもしれません』
仕事が長引く・・・私はドキッとした。長引くと言われても、もう赤屍さんの誕生日まであと三日しかないのに。





『・・・、・・・?』

「ぇ・・・!?はい!」





 考え事をしてしまったらしく、赤屍さんに何度か呼ばれて気が付く。
『そろそろ仕事に戻らなくてはならないので・・・』
「わかりました、赤屍さん・・・お仕事頑張ってくださいね」
『えぇ、ありがとうございます』
では・・・と言って赤屍さんはあっさり電話を切ってしまった。機械音しか聞こえなくなった携帯の電源ボタンを押してこちらも切った。その携帯をベッドの上に投げて私も身を投げ出した。





「赤屍さん・・・でもしょうがないか・・・仕事だもんね・・・」





 私は赤屍さんがどんな仕事をしてそれがどれだけ忙しいのか知っている。だからこそ無理を言えない。





「あと三日で赤屍さん・・・誕生日なんですよ?」





 一週間前から選んだ赤屍さんへのプレゼント。赤屍さんのために甘さ控えめの丁度一人分の大きさのケーキの練習。そして、どうしたら赤屍さんは喜んでくれるかのデートプラン・・・全てが無駄になってしまうかもしれない。そう思うと、自然と溜息が出てくる。





















 そして、今
思い出してまた私は溜息を付いてしまう。すると、コツンッと私の頭を何かが当たった。何だ?と思い、振り向くと、不機嫌そうな蛮ちゃんの顔があった。
「ちょ・・・痛いじゃない・・・」
「うっせぇ、テメーが落ち込みすぎてこっちまで気持ちが沈むんだよ」
「だからって殴らないでよ・・・」
「ったく・・・何があったか知らねぇけど、俺様の前で落ち込むな」
不器用な蛮ちゃんの励まし方なのだろうと思うが、やはり溜息は出てしまう。また怒ろうとした蛮ちゃんの言葉を遮って私は質問をした。

























「ねぇ・・・私って幸せなのかなぁ?」

「「はぁ?」」



























 これには銀ちゃんも驚いて声を上げる。
「私ね・・・今日、赤屍さんの誕生日だからお祝いしてあげようと思ったんだけど・・・仕事が入っちゃったらしくて赤屍さんが帰って来れないらしいの」
「赤屍さん・・・何でそんなに仕事が入るんだろう・・・」





銀ちゃん・・・今は羨ましがんないで・・・;





「やっぱり忙しいのは仕方がないんだけど・・・赤屍さんって私といるよりも蛮ちゃん達と居る方が楽しそうにしてるから・・・今回も別に私に祝ってもらいたいとは思ってないからこうして忙しくしてるのかな・・・って思ったりしちゃうの」
決して赤屍さんを信じてないわけじゃない。赤屍さんは自分が気に入らない人物には絶対に近づけないと思う。でも、銀ちゃんといる赤屍さんは凄く楽しそうで・・・。

「銀ちゃんが羨ましいな・・・」

「え・・・俺?」

「うん、赤屍さん、絶対に銀ちゃん好きだよ」

「そんな怖いこと言わないでよ、ちゃん〜・・・」

 泣きついてくる銀ちゃんの頭を撫でながら『ごめんね?』と言う。
「・・・おい、
「何?蛮ちゃん」
振り向くと、先程私の頭を叩いた手が今度は私の頭を撫でている。突然で分からなくて蛮ちゃんに視線を向けた。
「あんなクソ屍のために落ち込むんじゃねーよ」
「蛮ちゃん・・・」
私の頭を撫でてくれる蛮ちゃんの手が凄く優しくて温かくて・・・それが今の私にとっては嬉しくて涙が零れてしまった。
「お・・・おい、、泣くなよ!」
「だ・・・って・・・蛮ちゃんがっ・・・っく・・・そ・・な・・・・優しく・・して・・・っ・・・」
オロオロする銀ちゃんがいたけど、私の涙は止まらなかった。










『赤屍さん、本当に私が好き?』





『赤屍さん、私、今まで貴方の温もりを知らないんですよ?』





『赤屍さん・・・』











―貴方は本当に私といて幸せなんですか・・・?―























 頭の中に今までの不安が溢れてきてそれに比例するかのように涙もとめどなく流れている。
「ったく・・・おい、・・・泣くなって・・・」
蛮ちゃんは私の涙を少し乱暴に拭ってくれた。それでもその手は優しくて・・・私は少し安心感が持てた。すると、だんだん涙も止まってきた。
「・・・っ・・・蛮ちゃん・・・もう平気・・・ありがとう・・・」
「あぁ・・・」
私がそう言うと、照れ臭そうに顔を背けて手を離す。これが蛮ちゃんなんだと思ってクスクス笑ってしまう。
「なーに笑ってんだよ」
笑われたのが気に食わなかったらしく、私のほっぺを突っつく。けど、不意にその手は止まった。
「あ・・・。お前さっき泣いたから睫毛が付いてる」
「え、じゃあ取って?」
「あぁ、目ぇ瞑れ」
私は蛮ちゃんに言われた通りに目を瞑った。その瞬間・・・。


























―バンッ―










ホンキートンクの扉にはベルが付いてるはずなのにその音が聞こえなかった。それほどまでに強く開けられた入り口の扉に店に居た全員の視線が集まった。そこに立っていたのは。

























「ぇ・・・赤屍・・・さん?」



























 仕事で帰って来れないはずの赤屍さんが今、目の前にいる。嬉しいはずなのに、何だか怖い。私はそんな赤屍さんの様子を初めて見るから怖くて蛮ちゃんの後に隠れた。その時、赤屍さんの目がいつも以上に細められて睨まれた。





「・・・、来なさい」





 冷たい声、冷たい目・・・私は本当に赤屍さん?と疑いたくなる気持ちで一杯になった。私に差し伸べられた手が怖くて逃げる。

「や・・・っ!」
私が逃げていると、蛮ちゃんが私を庇うように立ってくれた。
「・・・何ですか、美堂クン?」
「ジャッカル、が怯えてるじゃねぇか」
「貴方には関係のないことです」
「俺には関係ない?はっ!笑わせんな。今までがどんな気持ちだったかも知らねぇでよくそんな偉そうに物事が言えるな、あぁ?」
そう言って蛮ちゃんは私を更に後に隠して赤屍さんを睨んでた。赤屍さんは素早く蛮ちゃんの顔スレスレの場所にメスを投げた。





に触らないでください」





 その目は本気で相手を殺すような殺気を放って誰も動けなくなってしまった。それを見て赤屍さんは私の腕を掴んで無理矢理ホンキートンクから引っ張り出したの。掴まれた腕が痛くて何度も赤屍さんに放してと言ったけど全く聞こえていないように無視されて・・・そのまま赤屍さんの自宅へ連れて行かれた。


























 赤屍さんは強引に私をリビングのソファーへ投げた。
「きゃっ・・・ちょ・・・赤屍さん!!」
怒って赤屍さんを睨もうとしたら、赤屍さんが私の上に乗ってきた。










・・・私が居ない間、何をしていたのですか?」

「ぇ・・・」

「美堂クンと何かしていたのですか?」

「蛮ちゃんと・・・?赤屍さん、一体何を・・・」

「先程、ホンキートンクで美堂クンとキスをしていましたね・・・」










 私が蛮ちゃんとキス・・・!?もしかして、睫毛を取ってくれてたときのアレを見間違えたの!?





「あれは・・・」

「貴女に触れていいのは私だけですよ?」

「赤屍さん、話を聞いてください!!」

「私は貴女を離しませんよ・・・」

「あか・・・っんん!?」





 私の声を聞かずに赤屍さんは私の顎を掴んでキスをしてきた。舌を絡めて私の全てを奪い取るような・・・その所為で私は生理的な涙を流した。
「んっ・・・やぁ・・っ・・・・赤屍さっ・・・んっ・・・」
私が赤屍さんの胸をドンドンと叩くと、ようやく口を離してくれた。私と赤屍さんの間には銀色に光る糸が繋がっていた。
「貴女は・・・私のモノですよ?美堂クンにも銀次クンにも誰にも渡しません・・・!」
私の顎を掴んだままで叫ぶように怒鳴る。こんな赤屍さんを私は見たことがない。いつも平然としていて大人びた雰囲気が私の中に強く残る赤屍さん。けど、目の前にいるのは余裕が全くなくて独占欲丸出しの赤屍さんだった。





「赤屍さん・・・私・・・蛮ちゃんとは・・・」

は・・・美堂クンがいいのですか・・・?」

「赤屍・・・さん・・・?」

「もし、そうだとしても私は貴女を離しませんから・・・もう貴女は私のモノなんですから」















「だから!蛮ちゃんとは何もしてないんですよ!!」















 いつまで経っても赤屍さんは誤解しているので声を大きくして赤屍さんに一言言ってやった。すると、今まで怒っていた顔がきょとんとした顔に変化していた。




















「・・・は?」

「だから、私は蛮ちゃんとは何もないんです!キスなんてしてないですよ!!」

「でしたらホンキートンクでは・・・」

「何処から見たのか分からないけど、あれは睫毛を取ってもらってただけです!!」





 赤屍さんの胸倉を掴んでそのままの調子で今度は私が怒鳴った。





「私は今まで不安だったんですよ!!赤屍さん、いつも銀ちゃんといるとき楽しそうなのに私と居るときは全然そんなことないし・・・いつも仕事ばっかりで私に構ってくれないし・・・今日だって・・・赤屍さんの誕生日なのに・・・側に・・・居てくれないし・・・」

 赤屍さんは私の話を黙って聞いてくれている。

「でも・・・赤屍さんは仕事なんでそんな我が侭を言えるはずないし・・・そんなことを考えてたら私は幸せなのか、赤屍さんは私といて幸せなのか分からなくなっちゃったんです・・・」
俯きながらまた涙が流れた。赤屍さんの胸倉を掴む手の力が抜けてソファーに落ちようとしたとき、赤屍さんが私の手を掴んだ。















「・・・赤屍さん?」

「私は・・・が側にいて幸せですよ・・・」

















 その手をぐっと掴んで私を引き寄せて抱きしめた。










「いつも貴女が美堂クン達と一緒に居るところを見ているだけで嫌な気持ちになりました。そんな気持ちがばれないように平然を装ってました。貴女と居るとき、今までに感じたことのない・・・一般的には幸せと言うんでしょうね・・・私はその気持ちをどうしていいのか分からずに無意識のうちに緊張をしていました」





 赤屍さんの言葉を聞いていくと、愛おしさを感じてきて別の意味の涙が零れてきた。それに気付いて赤屍さんが私の涙を拭ってくれる。










「仕事はしょうがないですけど・・・今日は私の誕生日。と一緒に居られるように仕事を詰めていたのです。ですが、それが裏目に出ていたなんて気付きませんでした・・・」









全て理由が分かった・・・私は、何て勘違いをしていたのだろう。こんなにも想われていたことに気付けなかった。

「ごめ・・・なさい・・・私・・・赤屍さんの・・・・・っ気持ち・・知らないで・・・」

 泣きながら謝った。泣きながら抱きついて赤屍さんの温もりを感じていた。

「私こそすみませんでした・・・これからもっとお互いのことを知っていきましょうね・・・」

 抱きしめ返してくれた赤屍さんの腕は蛮ちゃんの手よりも温かくて安心できた。















これが幸せ・・・



私は幸せなんだ・・・



嬉しい



嬉しい



赤屍さん



これからも一緒にいてください






HAPPY BIRTHDAY  愛しの蔵人・・・





















あとがき
 赤屍さん、お誕生日おめでとうございます!!
というわけで、かなり長かったのですが、ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!!
赤屍さんの恋人になったら大変だなぁと思いながら打ちました。
これからも赤屍さん、ヒロインさんを愛してくださいね♪

                                  2004.11.23


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