旅立ち



月が綺麗な夜、一人の女性が窓辺に立っていた。










「こんなところで何をしているんですか?










 のほほんとした声が聞こえてゆっくり振り向いたらは溜息を付きながら自分を呼んだ人物の名前を言った。



「光明・・・」

「ほら、女性が身体を冷やしては駄目なんですよ?」

「此処は寺院。だから『俺』ってことになってるだろ?」

「私といるときは女性でいてくださいよ」



 にこにこと笑っている光明の片手にはお酒があった。がじろっと見ていると、視線に気が付いて酒の入ったビンを持ち上げた。
「あぁ、これですか?これは綺麗な月と一緒に飲もうかと思ったんですけど・・・貴女がいるんでしたら何処でもいいですね」
「はぁ?私はまだ未成年・・・」
「それを言ったら私は『三蔵』ですよ?」
口では光明に敵わないと分かっていたのでそれ以上は言わなかった。光明がその場に座るのを見てからも腰を下ろした。
「大丈夫ですよ。私も鬼じゃないんです・・・お酒は飲ませませんよ」
「当たり前だ」
この頃、はまだ11歳。育った環境の所為か非常に落ち着いている。
「そういえば・・・光明?」
「何ですか?」
「何で私を雇ったの?」

























 は、自分が生きていくために仕事をしていた。それは、金があれば何でもするという所謂『何でも屋』だ。ある日、がブラブラ当てもなく森を歩いていると・・・。





『おや、何をなさっているんです?』





 後から声を掛けられた。



『こんな森の中で迷子ですか?それとも・・・』

『私は昔から一人ですから。それに、迷子でもないんです。もともと目的なんてないんですから・・・あるとすれば、私の仕事を探しに』

『仕事・・・ですか?』

『私は『何でも屋』をやっているんです。貴方もお金があるんでしたら私に何でも依頼してください。護衛から殺し・・・全てお任せください』



 淡々というに驚いた光明だったが、少し考えてからこう言った。



『あぁ、一応私は三蔵ですし・・・色々と厄介ごとがあったりするので私の護衛なんてやりませんか?』

『いいですよ?期間は?』





『私が飽きるまでです』

























 コレが、光明との出会い。それ以来、光明が『三蔵』として寺院へ行くときは必ずも付いて行った。



「・・・それよりも・・・何で私を雇ったの?」

「え?」

「そうじゃない。見ず知らずの私の話を信じて・・・それで、雇ってさ。今もこうして側に置くじゃない」

「はぁ・・・」

「ねぇ、私の話聞いてるの?」



 は光明の反応が気に入らなく聞いてみたら。月を見ていた。
「まぁまぁ、。見てくださいよ、月が綺麗ですよ」
「はぁ?」
「こんなに月が綺麗なんですから。そんな細かいことはいいじゃないですか・・・ね?」
あまりにものほほんとしている光明に毒気を抜かれてしまった。でも・・・。
「・・・本当に月が綺麗だからいっか」
「そうそう」
光明は酒を飲みながら、はそのつまみを食べながらゆっくり月を眺めていた。いつまでもこんな一時が続いて欲しい・・・心の底からは思っていた。

























 それから一年後・・・

いつものように光明がを呼んだ。
「何でしょうか、光明様」
今は昼間なので寺院の人もいる。だからは男のような振る舞いをしている。
「ちょっといいですか?」
「はい」
光明がを連れて来たのは寺院の裏だった。誰もいないことを確認すると、話を始めた。



、貴女を雇ってもう一年半・・・時とは早いものですね」

「あの・・・光明様?」

「誰もいないのでいつものように振舞ってください」

「じゃあ・・・光明、貴方は私に何を・・・」















「貴女を・・・自由にしてあげます」

















 突然の光明から言われた言葉だった。その意味は・・・。
「それは、私をクビにするってこと!?」
「まぁ・・・簡単に言えば・・・」
「何で!?私、いつもしっかり仕事をこなしてたじゃない!」
今、光明と離れたくない。ずっと一緒がいい。の中でそういう感情が込みあがってきて声を荒げてしまった。それを光明は優しく宥めて理由を言ってくれた。



「えぇ、貴女はしっかり私を護衛してくれました・・・」

「じゃあ・・・」





「貴女が傷つくのをもう見たくないんです」





「え・・・?」



「最初は、しっかり私を護って健気だと思いました。ですが、一緒にいるうちに・・・本当の娘みたいに思えてしまったんです。今、私の側にいる江流みたいな・・・」
江流・・・確か、光明が河で拾ってきた子供のこと・・・。
「私はそんな貴女に幸せになってもらいたいんです。これからのことは、私の知り合いの『三蔵法師』に任せます」
「三蔵・・・法師?」
「えぇ、少し変わってますが・・・多分大丈夫ですよ」
光明はの肩に手を置いて『分かってくれますか?』と再度聞いた。その光明の表情は本当にを心配してて・・・まるで自分の父親みたいな錯覚があった。きっと、この人は自分が否定しても引き離そうとするだろうと納得してしまった
「・・・わかりました。今までありがとうございました」
「お礼を言うのは私でしょう?」
クスクスと光明とは笑った。

























 暗くなってはこっそり寺院を出た。何となく今光明に会うと自分の感情をぶつけてしまうような気がして・・・それに、もともと見送られるのは何だか嫌なのだ。そういえば・・・と、最後に光明が言ったことを思い出していた。




















、私の知り合いですが・・・名前は『烏哭三蔵』です』


『烏哭・・・』


『えぇ、ですが気をつけてください。烏哭は曲者ですから』






















 笑顔で話してくれたが、光明が言うほどの曲者なんて信用できない。はそう思ってまた前みたいに放浪の旅を始めた。





















それから間もなく・・・
光明が死んで新しい『三蔵』が現れたという噂を聞いた。





















あとがき
 …ぅーん…;
始まりました、最遊記ドリーム。
光明様を出したかったんですよ〜…マジで。
過去のことだから時間とか正確にあってるかどうかも不安だし…もし、間違っていたらちょくちょく直します…。
これからもよろしくおねがいします〜;

                        2004.08.22


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