承諾



 八戒に連れられて三蔵の部屋の隣の八戒の部屋へと移動したと八戒。椅子を用意してもらってそこへ素直に座る。
「さてと・・・まず、貴女のお名前を伺ってもいいでしょうか」
「・・・名前を聞くならまず自分から名乗るものでしょう?」
普通の女性なら素直に名前を言うのだろう。しかし、その予想は外れて逆に聞き返されたことに驚く。
「あ・・・そうですね。僕は八戒、猪八戒です」
「そう、私は
「ではさん、貴女は何故三蔵の部屋にいたのですか?」
「・・・どうやってきたのかは覚えてないけど、どこぞの卑猥な神様に飛ばされたらしいの」
さっきもこんなこと言ったな、と心の中で思いながらそう言った。八戒はその一言で何かひっかかったらしい。
「あの・・・その『卑猥な神様』とはもしかして・・・」
何か心当たりがあるらしい。まぁ、あの観世音菩薩が『玄奘三蔵』と指名していたから仲間だと思われる八戒も知っていて当たり前だろうと思って頷いた。





「観世音菩薩って神様よ」


「あははは・・・やっぱり・・・と言うべきでしょうか・・・;」






―コンコンッ―



八戒が何処か呆れたような笑いをしていると、ドアがノックされた。中の人の返事も聞かずにドアが開いたのだ。
「おーい、八戒?」
「悟浄、何度言えば分かるんですか?ドアはノックしたあと返事がしてから・・・」
「あー、もうわーったって」
絶対分かってない。はそう確信した。しかも、今の会話はどこかの新婚夫婦みたいな会話だなぁ・・・と思ってしまった。
「・・・お、おねぇさん?貴女のお名前は?あ、俺は沙悟浄ね」
に名前を聞きながら悟浄はの肩に腕を回そうとした。





―シャッ―





 「見ず知らずの男に触らせるほど私は安くないんだけど?」
悟浄は首筋にいつの間に出したのか分からない剣を突きつけられていた。
「・・・見ず知らずの男に剣を向けるなんて常識外れじゃないのかな?」
「そう?こんな時代だし。警戒に越したことはないと思うけど?ちなみに私は
は悟浄のささやかな抵抗を見事に叩き落した。まだ離れない悟浄に先程よりも剣を近づけた。流石に悟浄もコレには驚き安全圏まで離れた。そんなやり取りを見ていた八戒は『これは凄い女性ですねぇ』と笑顔で感心していた。
「そうだった。ねぇ、私あの神様に貴方達と一緒に旅をしろって言われたんだけど・・・」

「「え!?」」

「どうすればいい?」
は忘れてたとでも言うかのように言った。しかし、コレが本来の目的なのだから忘れるということは・・・まず有り得ないだろう。
「ちょ・・・ちょっと八戒??」
「はい?」
悟浄は八戒を呼んで小声で話し始めた。



「どーするんだよ?」

「・・・って、僕に言われましても・・・最終決定権は三蔵にありますから・・・」

「でもさ、俺的には大歓迎よ?気丈なところとかもいいし、スタイルいいし・・・それに顔が綺麗だし

「はいはい、貴方の意見なんて三蔵が聞くはずないでしょう?



 笑顔でそうはっきり言われた悟浄は『そう言う時点で八戒も俺の意見無視してるだろ?』と思った。だが、声に出すと後が怖いのであえて言わな・・・言えなかったのだ。そんな悟浄の心境を知ってか知らずか、八戒は再びの元へ向かった。
「僕としては貴女を同行させたいのですが、最終決定をするのは三蔵でして・・・」
「玄奘三蔵がか・・・」
は少し思い出していた。光明が三蔵をどう言っていたのかを。





『・・・そう言えば光明?』


『何ですか?


『貴方の拾ってきたって子供・・・えっと、江流。その子ってどういう子?』



そう聞くと、光明はいつもよりも何割か増して笑顔になった(いつも笑顔だからよく変化が分からない)


『そりゃあ・・・一言で言えば綺麗ですね』


『え、女の子だっけ?』


『いいえ、男の子です』


『男の子に綺麗って・・・』


『ちょっと素直じゃないんですけど、不機嫌な時とか機嫌が良い時とかすぐに分かるんですよ。表情に出ない代わりに顔で表現したりするんですよね』



[ですよね]って言われても実際会ってないから知らないし。


『あと、あげるとしたら・・・』


『あー、もう光明が親ばかになっていくからもういいや』


『おや?そうですか?』



が呆れてその場を去ろうとすると、光明が付け加えて何か言ってきた。


『そうそう、コレだけは言いたかったんですよ』


『何?』


『あの子は意思が強く、何者にも揺るぎません。それは私も尊敬しています。ですが・・・』



そこで表情が暗くなって・・・。










さん?」
八戒に声を掛けられて気が付いた。自分は思い出に耽り過ぎた。
「どうかしましたか?」
「・・・何でもない・・・それで、私の同行はとにかく玄奘三蔵が決めるのね?」
「えぇ、そうなんですよ」
は先程の三蔵を見ていたため、自分の同行を受け入れないだろうと即座に浮かんだ。そして、自分もあんなエセ坊主・・・こっちからお断りだ。
「とにかく、今悟浄が三蔵を呼びに・・・」





―ガチャ―





 今度はノックもなしに入ってきた。は『礼儀がなってないなぁ』と思いながらその方向を見た。そこには先程八戒が『悟浄が三蔵を呼びに』と言った通り三蔵の後に悟浄もいた。しかも、前にいる三蔵は不機嫌そうにを睨んでいる。
「てめぇと一緒に旅をしろだと?」
「・・・何?」
「ち・・・上からの命令じゃなきゃてめぇなんぞ連れていかねぇからな」
「『上からの命令じゃなきゃ』ってことは・・・私を連れて行くってこと?」
「・・・頭の回転だけは速いな」
「あらら、三蔵様ったらやっさしー・・・」


―ガチャリ―


 「そんなに死にてぇのか・・・」
「いやーん。世の中の悟浄ファンが泣いちゃうっしょ?」
その後、悟浄は予想通り三蔵の銃で狙われてしまった。八戒はに『悟浄は死にませんから』と一言付け加えた。
「そうなんだー・・・?誰か来る?」
ぱたぱたと廊下から足音が聞こえては耳を傾けた。
「あぁ、あれは僕達のもう一人の連れです」
はまだいたのか・・・ともう疲れたような態度を取っていた。
「八戒!飯まだ!?」
開いていたドアから元気よく入ってきたのはこの三人とは違い、子供だった。
「猿はそればっかだなー」
いつの間にか三蔵の銃から逃れていた悟浄が悟空に突っかかっていった。悟空は頬を膨らませながら反論していた。
「うっせーなー・・・あ、そいつ、誰なの?」




















は正面から悟空を見て胸の奥が熱くなった。





桜が舞う木の下










!!―










誰かが駆け寄ってくる










―また花飾り作ってくれよ!!―










純粋な笑顔










―ナタク、喜んでくれるかな―










ころころ変わる表情










―俺、みんな好きだけど、はもっと好きだからな!!―










その言葉が凄く嬉しくて涙が零れた




























 何故だろう・・・何故この少年を見た途端そんな見たことも経験したこともない映像が頭に流れてきたのだろうか・・・。
「・・・なぁ!お前、名前何?俺悟空!!孫悟空って言うんだ!!」
悟空が初めて見る人に興味が湧いたのか一気に近づく。
「Σあ、馬鹿っ!!」
悟浄は先程の経験から迂闊に近づかない方がいいと学習したようで悟空を止めようとした。
「なぁなぁ、お前の名前はー?」
あの映像を見た所為だろうか・・・あまり警戒心と言うものが芽生えない。逆に、安心感が芽生えてきた。

























「・・・私はよ、悟空」



























 その光景には他の三人も驚いた。自分達の時は無表情で受け答えしていたが悟空に向かってだけ微笑んだのだ。その笑顔は綺麗で三人が見惚れるほどだ。悟空もその三人と同じく見惚れていたが、頭を撫でてもらったためその嬉しさで心が暖かくなっていた。
「今ね、あのエセ坊主が私も一緒に旅していいって言ってくれたから私も貴方達の仲間になるの」
「え、マジで!じゃあ、これからずっと一緒に居られるな!!」
「そうだね」
まだ笑顔で話す。それを近くで見られる、しかも悟空にだけ向けられることに悟浄が腹を立てた。
「猿のくせによー・・・」
「あはは・・・流石に僕もちょっと悔しいですねぇ」
笑顔の八戒だが、心の中はどうなのか分からなかった。そして、三蔵の心境も分からない。を睨んだまま静かに部屋を出ようとしていた。
「・・・明後日この宿を出る」
そう言ってドアを閉めた。
「分かりました、では明日中にさんに必要なものを調達しましょうか」
「あ、それだったら自分で買いに行くから気にしなくていいから」
は悟空から視線を外すと先程と同じ無表情に戻った。そして、懐から何か出してきた。
「コレ、あるから平気だしね」
出してきたのはゴールドカード。それには八戒も驚いた。何故持っているのか。そこまで金持ちだったのか??



「・・・何か、何で私がこんなもの持ってるか疑問に思ってる?だったら止めてね?そういう詮索って嫌いだから」



 スパッと言ってカードをしまった。



〜、腹減ったから飯食いに行こうぜ!!」

「えぇ、悟空が行きたいなら行こうか」

ちゃん〜、悟空だけ贔屓って酷くない?」

「だったら、私に好かれるようになりなさい」



 予想通りの反応に悟浄はがっかり。それとは正反対にと悟空は楽しそうに部屋を出て食事を取りに行ったとさ★



















あとがき
 はい、これで第一部完了って感じです★

それにしても、何だか中途半端な終わりですみませんι
えっと…第二部、このあと始まりますからよろしくお願いします…!!
                                  2004.08.28


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