猫みたいな君
ここは、マドカ邸。いつものように士度は動物達の相手をしていた。といっても、ただ一緒にいるだけだが。この日、マドカはリサイタルで海外へ出て行ってしまったので士度は何をするでもなくこうして庭先で座っているのだ。士度は、このマドカ邸の庭がお気に入りの場所。昼ご飯を食べた後にのんびりするのが一番幸せだと士度は思っている。
「・・・お前らにとっては狭いか?」
ふとそんなことを思って動物達に聞いてみたが、帰ってきた答えは『大丈夫』『今が一番幸せだから』という嬉しい答え。士度は幸せだと思いながらもなんとなくため息をついてしまう。
「まったく・・・お前らはこんなに素直なのにあいつはどうしてあんなにひねくれてるんだろうな・・・」
苦笑しながら側にいた猫の頭を撫でる。そう、士度が『あいつ』といった人物はこの猫にすごく似ているのだ。プライドが高くて神出鬼没でそれでも時々見せる可愛らしさが愛おしくてこっちから手を伸ばす。しかし、そうなるといとも簡単にすり抜けて行って・・・けど、いつも向こうからこっちへ近づいてきて・・・まぁ、掴みどころがないといった感じだ。士度は木に寄りかかって空を見上げた。
「おい、猿まわし」
突然声がした。しかも、そんな変な呼び方をする人物は士度の知る限りたった一人・・・。
「・・・美堂・・・?」
「なーに一人で寛いでるんだよ?」
蛮は、塀を飛び越えてきて士度のところへ降りてきた。いつものように偉そうに士度を見下してから隣に座ったのだ。
「別に・・・それに、今マドカが海外に行ってて暇してたんだよ」
「へー・・・嬢ちゃん、また海外へ行ってんのか?」
「そりゃあな・・・あいつの音は綺麗だからな」
マドカのバイオリンの音を思い出して顔が綻ぶ。そんな士度を見て蛮は士度の頬を抓った。
「・・・ってぇ!何しやがる!!」
士度は耐え切れずに蛮の顔を睨んだ。だが、蛮はそんなことお構いなしにタバコを取り出す。
「うっせぇ、何そんな嬉しそうな顔してやがる!」
視線だけを士度に向けて顔は正面を向いたままだった。一瞬、士度は嬉しそうな顔をしちゃいけないのか!?と言おうとしたが・・・。
「・・・おい」
「あ?」
「もしかして・・・嫌だったか?俺がマドカのことを思い出して幸せそうにしてんのが」
少しはっきりと聞いてみた。すると、蛮の顔が仄かに赤くなったが、さらに顔を背けて悪態をつく。
「ばっ・・・誰がそんな子供染みたことするかよ///!」
「そんな態度が子供染みてんだよ・・・」
士度はククッと笑いを堪えるようにしながら言う。蛮はそんな士度がムカついてまた怒鳴る。
「うっせぇ!第一、俺がいるんだからここにいねぇやつの話なんか・・・っ///;」
つい口を滑らせて言ってしまった。慌てて口を塞いだが、すでに遅かった。士度は蛮から視線を外さずに微笑む。
「そーだな・・・お前が隣にいれば俺は幸せなんだからな」
「・・・けっ///」
やっとおとなしくなった蛮の頭を撫でてまた微笑む。
こんなに好きになるとは思わなかった
こんなに可愛いとは思わなかった
一つ一つの言葉が
こんなにも嬉しい
俺は
こいつがいれば
幸せなんだと
実感した
時々すり抜けたり
近づいてきたりするけど
時々見せる
可愛らしい表情や
仕種が
俺の心を温かくさせるから
そう
やっぱりお前は猫みたいだな
「マジでお前、猫みたいだな」
「は?」
「なぁ、蛮?」
「っ///!!!」
名前を呼ぶと
側に来てくれる
お前が
本気で好きだ