受信拒否

 

 それは、突然だった。赤屍は、仕事を終えてすぐに銀次のところへ電話をかけた・・・とは言っても、仕事用の携帯電話では蛮にも見られるということで、赤屍は銀次にプライベート用として自分と同じ携帯電話を渡していたのだ。そうすれば操作を教えやすいという理由もあってのことだ。さて、話を戻して先程赤屍は電話をかけた。すると・・・。




















『トゥルルルル・・・プツッ・・・ツー、ツー、ツー・・・』





















 電話が通じない。今、確かに呼び出し音が聞こえたのに。赤屍がもう一度かけ直してみたが、同じように切られた。どうしてか分からず今度は電話じゃなく、メールにしてみた。

『件名:赤屍です
 本文:銀次君?先程電話をかけたのですが・・・何かあったのですか?』

その文を送ると、数分後に赤屍の携帯が震えた。赤屍は銀次からだと思って携帯の画面を見た。メール受信のマークが表示してあり、どんな理由があったのか読むことにした。

「・・・は・・・?」

赤屍はその文を見て信じられない、と言うような声を出した。

 

























『件名:銀次です
 本文:ごめんなさい、もう連絡をしないでください』

 

























 その文は、自分の連絡を拒絶するものだった。赤屍は自分が銀次に何かしたのか?と帰る足を止めて考えた。銀次が嫌がった姿を見たのは・・・一番最近のことは、先週、ホンキートンクで銀次が蛮に殴られていたのをメスで止めようとした。その次に古いのは、それから三日前の自分の部屋で銀次を押し倒した(ぉぃ!)次に古いのは・・・そうやって思い出してみても、いつも銀次はあとから『銀次君のためですから』と言うと微笑んで許してくれた。

「もしかして・・・その全てが原因ですか・・・?」

銀次は優しい。誰に対しても自分の損得を考えずに助ける。それは、銀次のいいところだ。赤屍もそんな銀次に惹かれたのだから認める。無意識のうちにそんな優しい銀次に甘えていて本当は嫌だ、と言えずにいて許していたのだろうか。もし、そうだとしたら・・・。

「私が嫌われるのも・・・無理はありませんね」

赤屍は、銀次と出会ってから自分は変わった、と思っていた。けど、それは全くの思い上がり。自分の欲求を満たすために銀次を困らせたり、怒らせたり、泣かせたり・・・思い返すと銀次に出会う前に欲求のために人を殺していた自分と何ら変わりはない。そう思った途端、赤屍は自分を嘲笑った。

「銀次君・・・それが君の気持ちなら・・・」





















―私はそれの気持ちを受け入れましょう―

 

























 赤屍が銀次に拒否されてから数日、あの日に銀次から離れると決意したのに、心はまだ携帯を気にしていた。

「・・・まだ諦めきれないのでしょうか・・・」

そう苦笑しながら赤屍は携帯を手にとってサーバーに問い合わせをしてみたが、何もなかった。その携帯をソファーの上に落として自分も座る。

「銀次君・・・君は本当に私のことが・・・」

そこまで思考が巡ったとき。

 





―ビー・・・―

 誰かが来たことを知らせる音が部屋に響いた。赤屍は珍しい、と呟きながら誰が来たかを調べるために受話器を取った。

「・・・どちら様ですか?」

少し間があった後、すぐに声が聞こえた。






『あの・・・オレです』






 赤屍の部屋のドアホンには、カメラが付いているために誰が来たのかすぐに分かった。自分が求めていた人物、天野銀次だった。先程まで沈んでいた心が浮上してきてすぐにドアを開けようとしたが・・・。

 

























―また銀次君の優しさでは?―

 

























 その考えが頭を過ぎって受話器を持ったまま立ち尽くしてしまった。

『赤屍・・・さん?』

黙ったままの赤屍が気になって銀次はドアの外で声をかけた。それでも赤屍は黙ったままでいた。

『赤屍さん・・・今、忙しいんですか?だったら、また今度・・・』

「銀次君・・・」

また銀次と会う約束をされそうになったとき、赤屍がやっと銀次に声をかけた。

『はい!何ですか!』

ドアの向こうでは銀次が嬉しそうな声を出して返事をした。その時の銀次の嬉しそうな顔を見たとき、どんなに抱きしめたいと思ったか・・・どんなに直接話をしたいと思ったか。けど、これ以上自分勝手な気持ちで銀次を苦しめたくない。

「銀次君」

赤屍は気持ちを落ち着かせながら言葉を発した。


























「もう・・・無理して来なくていいですから・・・」

『え・・・?ちょ、赤屍さん!?どうかした・・・』


























 まだ銀次が何か言おうとしていたが、赤屍は銀次の声を聞くと自分の身体が銀次の方へ行ってしまう気がして無理矢理電話を切った。そのままソファーに座って目を瞑った。











「銀次君・・・もう苦しまないでくださいね・・・」

 





















 銀次は一歩的に切られて呆然としていた。今までこんなことはなかったからだ。自分がどんな時間に来ても赤屍は笑顔で迎えてくれて。飲み物を出してくれて微笑みながら自分の話を聞いていて・・・今日はどうしてだろう。何でこんなに冷たくされたんだろう、と頭の中で混乱していた。

「・・・どうかしたのかな・・・」

銀次は、この数日間、赤屍に会っていなくてどうしているのか気になっていた。今まで赤屍は、仕事が終わるとプライベート用の携帯にメールか電話をしてくれた。そんな連絡一つ一つが嬉しくて銀次はいつも緊張と幸せを感じながら電話に出ていた。

「もしかして・・・オレ、ウザかったのかな?」

仕事終了の電話が掛かってきたとき、銀次はそれまで話せなかったことを直接話したくて赤屍に仕事が終わった次の日に会いたい、と約束をしている。今思えば銀次と違って赤屍は仕事がたくさん来る。それも、医者と両立してやっているのだから疲れているはず。更に、それを気遣って銀次は自分から赤屍の部屋へ行き、会ったりしている。赤屍はそんな銀次を嫌な顔を一つもしないで部屋に入れて話を聞いてくれた。どんなにくだらなくても一緒に笑ってくれたり、時には周りの人に嫉妬をしたり。銀次にとってかなり幸せなことだった。

「そっか・・・赤屍さんは優しいから・・・」

自分に振り回されてもう疲れたのかな?嫌になったのかな?という考えをしていたら、銀次の目から涙が流れてきた。何て馬鹿なことをしたのだろう。どうして今まで気付かなかったんだろう。

「ごめんなさい・・・赤屍さん・・・」

もう一度ちゃんと謝りたくてドアホンを鳴らしてみたが、赤屍は何も反応をしてくれない。いや、電話に出てくれないのだ。銀次は数回鳴らして出てこなかった赤屍に何度もごめんなさい、と心の中で謝った。しかし、やっぱり赤屍が好きなので直接謝りたい。

「こんなところに居たら・・・赤屍さんに更に嫌われるかな?」

そんな不安を抱きながら銀次は赤屍の部屋の前で赤屍が出てくるのを待つことにした。

 





















 ふと、赤屍が目を開けた。どうやらいつの間にか眠っていたらしい。赤屍が時計を見ると、時間はもう夜の9時。あれから5時間も眠っていたのか、と思うと、仕事用の携帯のライトがついているのに気が付いて来ていたメールを見た。どうやら、今日中に会ってほしいというメールで『今から向かいます』と返信をしてコートと帽子を被って出かけようとした。






―ゴツッ―

「いたっ!」

「!!?」

ドアを開けた途端、鈍い音がしてたと同時に何か声が聞こえて驚いた。すぐに外を見回して原因を探ると。

「な・・・銀次、君?」

「赤屍さん・・・」

銀次が居た。先程来たのは分かっていたが、もう帰っているのかと思っていた。

「・・・どうして・・・」

「?赤屍さん?」

「どうして此処に居るのですか?」

信じられない、というような表情で銀次を見下ろしながら問いかけると、銀次はいつもの笑顔を向けながら立ち上がった。

「赤屍さんに話を聞いてほしくて・・・」

「話ですか?」

「そうです・・・あ、これから仕事なんですか?」

「えぇ」

「じゃあ・・・すみません。また今度出直してきます」

銀次が帰ろうとした時、赤屍の中で不安が過ぎった。このまま銀次を返したら自分は後悔する。そう思ったら赤屍の腕が銀次の腕を掴んで帰るのを止めた。赤屍は、銀次の手の冷たさに驚いてどれほど長い時間自分を待っていたのか思い知ったのだ。

「っ赤屍さん!?」

「何故君は・・・」

そこまで言って赤屍は銀次を部屋の中へ通した。というよりは、押し込んだ。銀次は引っ張られていた手をいきなり離されてリビングの床に倒れこんだ。

「いたた・・・」


























「何故君はそこまで優しくするのですか!?」


























怒っているような苦しんでいるような赤屍に銀次は戸惑いながら黙って話を聞くことにした。

「貴方は私に優しくして・・・私はその優しさに甘えて銀次君を苦しめてた・・・」

「苦しめてた?」

「そして、私はそれに気付かずに今までそんな接し方をして貴方を追い詰めて・・・」

「追い詰めて?」

「この前のメールで貴方の気持ちが分かったのです」

「メール?」

「貴方は・・・もう私と会いたくないのでしょう?」

「会いたくない・・・って、えぇ!!?」

「だから私は・・・」

「ちょ、ちょっと待ってください、赤屍さん!!」

赤屍の話に疑問を抱きながら聞いていた銀次は、赤屍の言葉に驚いて無理矢理赤屍の話を止めた。

「何ですか?」

「オレ、いつ赤屍さんと会いたくないなんて言いましたか!?」

「・・・最後のメールの時です」

「最後・・・っ!?」

銀次は思い出したように自分の携帯を出してその時の送信メールを確認した。すると、確かに赤屍に送ったメールがあった。

「銀次君、私は・・・」

「赤屍さん!!オレの話を聞いてください!!」

銀次が立ち上がって赤屍の腕を掴む。

「オレは確かにこのメールを送りました」

「だったら・・・」

「でも!!それはもう赤屍さんに会いたくないって気持ちのメールじゃないんです!!」

「・・・でしたら・・・」

「これは!オレが赤屍さんに嫌われないようにするためのメールです!!」

赤屍は、自分が思っていたこととまったく違う答えに驚いてそのまま黙り込んでしまった。

「その・・・オレ、赤屍さんが仕事から帰ってきてその次の日に会う約束とかしてるじゃないですか・・・赤屍さんは仕事で疲れてるのに。だから、赤屍さんはいつかオレに付き合いきれなくて別れちゃうんじゃないか・・・って思って・・・でも、分かっててもメールとか電話が来たりして仕事が終わった報告をしてくれるのが嬉しくて・・・自分じゃ好きって気持ちが抑えられなくて・・・ウザいとか思われたくなくて・・・」

言っていくうちにだんだんと顔を赤くして、それと比例して声が小さくなっていく。赤屍はそんな銀次を見ながら今まであった苦しい気持ちがなくなってきていた。

「その・・・赤屍さんが休めるように仕事が終わってから連絡はしないで・・・赤屍さんの身体が十分に疲れが取れたときに会えればいいなって思って・・・だから・・・」

「もう連絡をしないでください、と?」

「は・・・はぃ・・・;」

顔を真っ赤にしながらも銀次は頷いた。そんな銀次が愛おしくて赤屍は銀次を抱きしめた。その行為に驚いた銀次は赤屍の腕の中でプチパニックを起こしていた。

「あ・・・赤屍さ・・・!!」

「銀次君・・・私は貴方と居て疲れる、ウザい、なんて思ったことはありませんよ?」

「・・・ぇ・・・」

「私は、銀次君があのようなメールをしてきたのでもう私は嫌われたのかと思いました」

「いえ!オレは・・・いつも自分勝手に赤屍さんと会っていたので嫌われたのかと・・・」

そこまで言ってお互いの顔を見合わせて同時に笑い出した。その時の二人の顔はとても幸せそうで心の中が温かくなった気がした。





















「銀次君・・・私はどんなときも貴方を愛してますよ」

「オレも赤屍さんが好きです・・・///

「おや、銀次君は『好き』なんですか?」

「え?」

「私は『愛してます』よ?」

「ぁ・・・愛して・・・マス・・・///

「クス、ありがとうございます♪」





















 二人はその後、お互いの気持ちを確認しあうように優しいキスをしたのだ。そして、また微笑み合って幸せに浸っていたのだ。

 

 























□オマケ□

「あ、赤屍さん!お仕事じゃあ・・・」

「仕事なんてキャンセルです♪」

「えぇ!?」

「銀次君・・・」

「赤屍さ・・・っうわ!!」

「クスv

「え゛・・・赤屍・・・さん?」

「さ、お互いの全てを理解する為にベッドに行きましょうか♪」

「まさかっ!!」

「クスクスvv

「ちょ・・・赤屍さっ・・・嘘――――///!!!

もう終われ。



















あとがき
 第二弾は、屍銀でした!!
えーっと…無駄に長い!!
そして、ちょっと弱気な赤屍さんを書きたかったので書きました(笑)
                                 2005.04.07

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