返信
携帯のディスプレイを眺めながら一つため息を付く。それは、もう何日も続いている。確か、今日で6日目・・・。
「ねぇ、蛮ちゃん?」
「・・・ンだよ?」
「あれからまだ士度から連絡こないの?」
銀次がこう聞いたのは、ため息を付いているのが蛮だからだ。最初の頃は、仕事が来ないからかと思ったが、いつもの蛮と様子が違っていたので心配になって声をかけた。
「・・・別にあいつからの連絡待ってるわけじゃ・・・」
「でも、士度からの連絡が途絶えてから蛮ちゃんずっとため息付いてるし・・・」
「銀次には関係ねぇよ。タバコ切れたから買ってくるな」
「ちょ・・・蛮ちゃん!?」
ホンキートンクのカウンターの上にはまだ数本入っているタバコが置いてあったが、蛮はタバコを口実に店を出た。銀次はそんな蛮をただ見送ることしかできなかった。
いつも見慣れているはずの道。いつも士度の家へ向かう道のはずなのに寂しい。蛮はもう一度携帯を開いてセンターへ接続したりしたが、案の定、メールは何もなかった。
「・・・くそ・・・返信くらいしろっての!」
イライラした蛮は携帯を投げようとしたが、そうすると士度との連絡が途絶えてしまうので乱暴にポケットの中へ戻した。そして、再び歩き出すと、数日前のことを思い出していた。
『は?』
『だから、しばらく仕事で会えなくなるから』
『けっ・・・別に俺にいちいち報告しなくてもいいじゃねーか』
『お前、こう言わなきゃすごく機嫌悪くなるだろ?』
『うっせぇ!』
『とにかく、そういうことだから』
『・・・勝手にしろ』
『大丈夫、ちゃんと毎日一通くらいメールしてやるから』
『頼んでねぇって!!』
『まぁ、勝手にするからな』
『・・・///』
この約束をしたのが6日前。そして、士度は約束通り最初の3日は蛮にメールをしていた。どんなことがあった、何をしたかなどを書いただけ。けど、それが士度が無事だという証拠だったから嬉しかった。それなのに・・・。
「何で急に返信がこねぇんだよ・・・」
蛮は士度から来たメールに返信をしていた。そして、士度も短いながらもメールを返信してくれていた。けど、蛮がメールを送信してから返信が来なくなったのだ。1日くらいは仕方ない、そう思っていたが、2日が経つと心配してきた。自分達がしている仕事はいつ命を落としても仕方がないといった危険なこと。士度は強いが、それ以上に強い相手はまだまだたくさんいる。蛮は、珍しく士度の心配をしていた。
「早く帰ってくるか返信しろよ・・・猿まわし・・・」
返信が来るということはまだ士度が無事な証拠。それが途絶えてしまった今、蛮の頭には最悪の状況が巡っている。
士度は怪我をしたのか?
士度は誰かに捕まったのか?
士度は
死んでしまったのか・・・?
蛮はその考えを振り切るかのように頭を左右に振った。
―〜♪〜〜♪・・・―
突然蛮の携帯が鳴って慌てて携帯を開く。すると、そこには待ち望んでいた名前が表示されていた。
件名:悪かった
本文:連絡が出来なくて悪かったな・・・仕事の様子が急変して携帯に触れなかったんだ。けど、そのおかげで仕事が今片付いたから今からそっちへ帰る
なんとも士度らしい文章。蛮は仕事が終わったなら平気だ、と思ってすぐに返信をした。
件名:Re:悪かった
本文:もう返信のことはいいからさっさと戻って来い
久々のメールだったが、蛮はそう返信をした。メールでは冷めてるように見えるが、蛮の心の中は穏やかになっていた。士度が帰ってきて自分を捜さないように安心した顔をしながらホンキートンクへ向かった。
あいつからのメールは
士度が無事な証拠
あいつからのメールは
俺を安心させる
けど
あいつが帰ってくるなら
それだけで心が満たされる