光なき闇
赤い月・・・満月が浮かんでいる闇のような夜がやってきた。そうすると、赤屍は活動をする。闇にも負けない赤い鮮血を見るために・・・。
「今日はどんな人がやってくるのでしょうね?」
赤屍はクスクスッと笑みをこぼした。それは、決して楽しみだからだけではなかった。自分の滑稽さにも笑っていた。
「私は人ではない・・・だが、人と同じ姿をしている。その同じ姿の『モノ』を殺している。私は何の為に生きているのでしょうね・・・?」
そう、こんな人生は赤屍にとって何の価値もない。だったらこんな世の中にいる必要はないのだ。それなのになぜか死なない。そんな何の価値もない人生に執着している自分の姿に・・・。
「本当に・・・滑稽ですね」
―ガサッ―
物音がした。今日の獲物が来たのか?と思った。だが。
「・・・?赤屍さん?」
姿を現したのはこの闇にも負けない金髪の少年・・・。
「銀次君?」
その名前を呼んだら銀次は怯えた。
「あ・・・どうも・・・あの・・・今日は何を?」
「ええ、これから仕事なんですよ。どうです?銀次君も一緒に」
「え!あ・・・丁重にお断りします・・・」
その怯え方が赤屍にとっては滑稽だった。この世に執着する姿が。
「それは残念です。それでは」
「あの!!」
赤屍が歩き出したら銀次が引き止めた。
「・・・なんですか?」
「あの・・・赤屍さんはオレと闘ってまだ日が浅いのに・・・その・・・体のほうは大丈夫なんですか?」
銀次の言葉に赤屍は驚いた。まさか自分の敵の心配をするなんて思わなかったからだ。
「ええ、大丈夫ですよ?」
「でも、もしも傷が開いて敵にやられたら・・・!」
「私は大丈夫です。そんなに生きることに執着していないので」
銀次は唖然としている。赤屍は自分の感情を読まれないように帽子を深くかぶった。
「赤屍さん、それでいいんですか?」
「何がですか?」
「生きることに執着するのは当たり前です!生きているものなら・・・!」
「私は生き物ではないのですよ?ただの殺人狂です。それに、私は貴方みたいに明るいところにいる気なんてないんですよ」
赤屍の言葉に銀次は―。
「赤屍さん、生きてください」
「・・・?銀次君?ですから・・・」
「オレが!!・・・オレが赤屍さんの光になります。赤屍さんも気に入りますよ?明るい場所にいるってことは安心できるんです」
銀次君が私の光に?赤屍は笑った。
「貴方はなんて滑稽なんでしょうね。私の闇は何者にも照らせません。私には必要ないんですから」
「それはまだ分かりません!ですから、試しに照らされてください・・・オレに。だから・・・」
銀次の必死さに赤屍はため息をついた。
「・・・分かりました。それではまだ『生きて』差し上げますよ」
「本当ですか?!」
銀次の顔が明るくなった。赤屍は胸の中が何かに溶かされた気がした。
「約束ですよ!それじゃ、また!!」
「あ・・・えぇ・・・それでは」
赤屍は一瞬ためらった。銀次が自分から去っていくことを・・・。
この私が?あのバカっぽい天野銀次を?まさか。
「約束ですからね〜!!」
銀次の笑顔が赤屍の全てを支配していた。
「まったく、何なんですかね。私は」
そう言いながら仕事に向かった。
―しばらくして、赤屍のあたりは血の海になっていた。
「私はどのくらい殺したんですかね・・・」
そんなことをぼんやり考えていた。
『約束ですよ!』
少年の・・・銀次の笑顔が浮かんできた。
「私に光なんて・・・?」
赤屍が空を見上げた。そこには、銀次の髪にも負けない満月が浮かんでいた。
「先ほどは赤いはずでは?」
もしかしたら・・・その月は私の中の月・・・?まだ見ぬ月を見ていたのか?では、今の月は・・・。
「・・・銀次・・・君?」
赤屍がその名を口にした瞬間・・・。
―ドクンッ―
赤屍の胸が大きく波打った。まるで生きている証みたいに・・・。
「・・・なるほど、そういうことですか」
クスクスッと笑いながら赤屍は闇の中へ消えていった。
『赤屍さん』
少年の声が赤屍を呼んだ。それだけの理由で私は生きていけると実感する。胸が暖かくなる。私は、銀次君の所為で『人間』に成り下がった。
「まったく、銀次君の所為ですからね?」
闇は今、光を見つけた・・・