暑い

 






―暑い―






 

 森の中をジープで走っている三蔵一行。よく見てみると、いつもと何か様子がおかしい・・・。

「あっつ〜・・・なぁ、八戒!」

「何ですか?悟浄」

「次の町はいつになったら着くんだよ〜」

「えーっと・・・この地図によれば・・・あと二時間くらいですね」

「ぅえ・・・まだそんなにあるのかよ」

後部座席で悟浄は八戒の言葉に希望を失って背もたれに凭れ掛かった。それを見た悟空は笑いながら言った。

「何だよ、いっつもは俺のこと『うるせー』とか言うのに今日は悟浄が『うっせー』よ?」

「な・・・こんの〜!」

悟空の態度が気に入らなかったらしく、悟浄は悟空の頬を両サイドから引っ張った。

「ひででででで!!」

「へっへ〜んだ!俺をバカにすると・・・こうなるんだよっ!」

「んだと!?このエロ河童!」

そんな喧嘩をまた始めてしまった二人。八戒は、やっと静かになったのにと少し残念そうな笑顔を三蔵に向けていた。やはり、予想通りに三蔵の不機嫌指数はMAXに近いものだと見て取れた。心の中で八戒がカウントダウンを始めた。3・・・2・・・い・・・。

 











―ガゥンガゥンッ!!―











 

予想よりも早い三蔵の銃声。それに驚いて振り向いてみると(運転中なのに;)

「てめぇら!こんな暑い中騒いでんじゃねーよ!そんなに涼しくなりたかったら何にも感じさせなくさせてやろうか?」

「「それだけは勘弁〜!」」

「あはは、いつものみなさんに戻りましたねぇ・・・」

「いや、八戒もそんなのん気に笑ってないでさ・・・」

悟浄が笑っている八戒にツッコミを入れたがそれは、流されてしまった。

「あ、ほら。皆さんが騒いでいるうちにもう町に着きましたよ?」

八戒の声に悟空が目を輝かせて前へ乗り出した。町が見えると、先程の怒りはそこへやら。もう上機嫌になっていた。

「うわぁ!ウマイ食い物あるかな!」

「お猿ちゃんってばそればっかりだよね〜」

「う・・・いっつも女の子とばかりの悟浄に言われたくねーよ!」

「だから、黙れと言ってるだろうが!!!」

町に入る前に銃声が響き渡った。

 

 

























 町の食堂で夕食をとって宿に着いたはいいが、止まる部屋の問題だった。二人部屋を二つしか用意ができなかったのだ。

「・・・どうしましょうか?」

「俺、ゼッテー静かに寝たいからな!!」

「おめぇは鼾がうるせぇからなー」

「悟浄だって寝ぼけて抱きついてくるじゃんか!」

ギャアギャア騒ぎ始めた悟浄と悟空に今度はハリセンを一発かました三蔵様☆











「では、三蔵と悟空、僕と悟浄でいいですか?」

「あ?」

いきなり言い出した八戒に少し不満を抱いて三蔵がそんな声を出してしまった。

「ですから、悟空と悟浄は別々の部屋がいいんですよね?」

「「当然」」

「そうしましたら・・・寺院で悟空と一緒だった三蔵が一番適任ではないかと・・・」

「八戒は猿の教育係だろうが」

「大丈夫です。もう後はお風呂に入って寝るだけですから」

いつものごとく、隙のない笑顔を向けられて三蔵は何も言えなくなってしまった。その隙に八戒は三蔵に部屋の鍵を渡して悟浄と自分達の部屋へ向かってしまった。






「なぁ、三蔵」


「・・・何だ」


「き・・・機嫌直せよ・・・な?」






三蔵の心配をしたのにハリセンで殴られてしまいました。

 










それぞれの部屋で自分達なりに寛いでいた。

 

























―八戒&悟浄ルーム―

「・・・はい、悟浄」

「お、サンキュ」

暑いと五月蝿い悟浄に八戒はビールを出してあげていた。それを嬉しそうに飲み干すと、生き返ったように煙草に火をつけ始める悟浄。

「やーっぱ暑いときにはビールだよな!」

「そうですか?僕にはよく分かりませんが・・・」

「いやさ、夏!って言ったら水着のねーちゃんにビール!コレっきゃねーだろうが!」






「あはは。いつでも悟浄は女性のことが一番なんですね」






 少し軽蔑の意も込めて笑う八戒に悟浄はあはは、と引きつった笑いをした。飲み干したコップにもう一杯ビールを注ぎ足して一口飲んだ。

「まぁ、それは冗談として・・・」

「冗談ですか?」

「・・・;ってことにしておいて」

「はいはい」

「・・・ま!とにかくありがとな、八戒!」

ビールを掲げながら悟浄は八戒にお礼を言った。そこまで嬉しいのか?と思いながらも八戒は笑顔を向けていた。

 


























―三蔵&悟空ルーム―

 「・・・」

「・・・;;」

先程からムスッとしながらいつもよりも多く煙草を吸っている三蔵。そんな三蔵の前で気分を害するような行動に出られず動けない悟空。いつまでこんな沈黙を続けるのだろうか?と悟空は泣きそうになっていた。






―カタンッ―

いきなり椅子の音がしてそれにビクッとした。悟空のそんな行動にイラついたのか一睨みして扉のほうへ向いてしまった。

「あ・・・三蔵??」

悟空が怯えながら三蔵に質問をした。

「あ?」

「何処行くんだよ?」

「・・・煙草切れたから買いに行くんだよ」

バタンッと扉を閉められた。誰も居なくなった部屋で悟空は大きく深呼吸をして。

「た・・・助かったぁ〜!」

枕を抱えて心底そう思っていた。何で機嫌が悪かったのか分からないが、とにかくあの緊張から解放されたのだ。ゴロゴロと転がり始めた。

 


























―八戒&悟浄ルーム―

 「・・・あ」

今まで静かに他愛のない会話をしていたら悟浄が何かに気が付いた。

「どうかしましたか?」

「ん?いやさ、煙草切れちゃってさ〜。買いに行ってくる」

「たまには禁煙でもしたらどうですか?」

「いい男には女と煙草と酒って言うでショ?」

そんな軽口を叩きながら悟浄は静かに部屋を出て行った。八戒はそんな背中を見送りながら『やっぱり女性が一番なんですね』と心の中で囁いた。

 

 


























 暑い・・・

三蔵は心の中で何度も呟いたことだった。この日はいつも以上に暑かったのだ。しかし、それ以上に悟浄と八戒が一緒の部屋だと言うことが何だか嫌なのだ。その所為もあって三蔵の機嫌は宿に着いてから最高に悪い。

「・・・ちっ」

そんな自分に嫌気が差して舌打ちをしながら愛用している煙草を探した。

「・・・?」

いつもよりも軽い煙草を覗くと、中は空になっていた。買ったのは昨日。自分はそこまでイラついていたのかと思ってしまう。それがまたイラついて空になった煙草を握りつぶして廊下に叩き落した。

 





















「あ〜あ、駄目でショーガ。ゴミはゴミ箱にってね」





















 

軽い言葉が聞こえてきた。とても聞きなれていて誰だかすぐに分かった。

「悟浄・・・」

三蔵はその声の主に呆れながら声をかけた。今、買い物から帰って来たのだろうか。悟浄の腕には煙草が入った袋があった。悟浄は『やっぱり不機嫌だったのね?』と思いながら三蔵の横に立った。

「はぁ・・・三蔵?暑くて機嫌が悪くなるのは分かるんだけどね。そんなバレバレの態度だと周りの人が怯えちゃうぞ?」

原因が自分にもあることに気が付いていない悟浄。それに呆れながらも三蔵はあまり知られたくないのでごまかした。

「ふん・・・暑いこの気候が悪い」

何とも自分勝手な言い分。だが、それが三蔵なのだから仕方ない。悟浄は自分の煙草を取り出しながらそう思った。

「おい」

突然声を掛けられて『ん?』と視線だけ三蔵に向けた。

「煙草・・・」

「え?お前のは?」

いつもは悟浄の煙草を嫌っているのに自分から煙草をよこせと言うことに驚いた。そんな顔をしていると、三蔵は溜息を一つついた。

「俺のが切れたんだよ」

「あぁ・・・ナルホドね」

納得すると、素直に三蔵へと煙草を渡す。それを見届けてからお互い煙草に火をつけて煙を肺一杯に吸い込んだ。そして、落ち着いたようにその煙を吐いた。

「しっかし・・・三蔵?」

「何だ」

「流石に二日で切れるってのは吸いすぎじゃないんデスカ?」

「黙れ」

「・・・折角三蔵サマのお体を心配してあげたのに・・・悟浄カナシー」

「・・・死にたいのか?」

不機嫌度が煙草のお陰で幾分ましになったが、それでもまだ機嫌が悪いらしく、ハリセンを構える三蔵が居た。悟浄はあはは・・・と乾いた笑いをして『降参』の印に手を上げた。

「ふん・・・貴様の頭もこの暑さでいかれたんじゃねーか?」

「あらら。そーんなことないけど?」

いつものようにおちゃらけて言う悟浄。それを冷たく指摘する三蔵。これがいつもの二人。いつの間にか三蔵の機嫌も良くなってきている・・・気がする。

「あーぁ・・・しっかし暑いよなぁ」

「貴様の頭も暑苦しい」

「あら・・・三蔵ったら冷たいなぁ」

いつもの調子に戻った三蔵にほっとして悟浄は三蔵に微笑んだ。

「・・・何だ」

いきなり微笑まれても困るといった感じで三蔵がそう悟浄に聞いたが、なんでもない〜。と軽く流された。

「さて・・・と。明日早速此処を出るんだろ?俺、そろそろ寝るから」

「・・・あぁ」

悟浄がそう言って自分の部屋に戻ろうとした。

『あ』と何か思い出したように悟浄は顔だけを三蔵に向けていった。

「三蔵?」

「あ?」

「この暑い中、あんまり無理するなよ?」

悟浄は三蔵の心配をして言った言葉だったが、何とも軽い口調。本気で心配してるのか?と疑問に思ったりするが、三蔵にとってはそのくらいが丁度良いのだ。それを知って悟浄は言う。

「・・・あぁ」

「そっか。ならいいや。おやすみ〜」

今度は進行方向に顔を向けて歩き出す悟浄。

その背中を見届けた後、三蔵は銜えていたていた煙草を見た。

「・・・おせっかいなんだよ」

そんな風に悪態つく三蔵の顔はどこか優しい表情だった。悟浄が自分を心配してくれていることが嬉しかったのだ。

 
















暑い日に温かい言葉・・・

これ以上暑くさせてどうするんだと思っていながらも

こういう暑さなら悪くない

と思ってしまう自分が居ることに何だか笑えた

 

暑い日の暑い夜の暑いお話()














あとがき
 久々の更新。
えぇ、あと少しで(明日)テストなのに更新しました。
あれ?
こういうのって…現実逃避???
まぁ、いっか。
しかし…暑い暑い連発してます。
聞いてるこっちが暑いです。
というか、コレは一体何がしたかったのでしょうか??
自分でもよく分かっていませんι


                                  2004.07.20

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