短冊
久しぶりに大きな町に着いた三蔵一行。入った途端、騒がしい雰囲気になっていた。
「何だ、祭りか!」
悟空が目を輝かせてジープから身を乗り出した。
「バカ猿!あぶねぇだろうが!!」
「あら、貴方達知らないの?」
何か荷物を運んでいる女の人が話しかけてきた。悟浄は『お、いい女!』と素早い動きで女の人の側に寄った。
「ねぇ、お姉さん?その重たそうな荷物持ってあげるよ?んで、ついでに一緒に・・・」
―ガゥンガゥンッ―
悟浄が口説いていると、三蔵の激しいツッコミ(笑)が飛んできた。
「いきなり何するんだよ、三蔵!!」
「貴様の頭はそれしか考えられないのか、エロ河童!!」
女の人が呆然としていると、八戒が車から降りて話を聞こうとしていた。
「あの方達は気にしなくていいですよ。それで、この町で何かあるんですか?」
「えぇ、年に一度のお祭りです!」
「やっぱ祭り!!」
「あ、もしかして、七夕だからですか?」
八戒がそう言うと、女の人は笑顔で頷いた。
「へぇ、だからこんなに騒がしいのか・・・お姉さんもその荷物って祭りの準備の為?」
「そうよ。あ、貴方達って旅の方でしょ?私の宿に来ない?」
「え、いいのか!」
「やっだ〜、悟浄行く行く〜♪」
「悟浄・・・(怒)」
八戒も宿が見つかってよかったですね、と言って女の人に案内をしてもらった。その途中で・・・。
「そうだ、折角この町に立ち寄られたんです。良かったら参加しませんか?」
「参加ですか?」
八戒が聞き返すと、女の人はポケットの中から何か紙を出してきた。そして、三蔵・悟空・悟浄・八戒とそれを渡した。
「・・・何コレ?」
「それは、短冊です」
「これが何なんだ?」
「その短冊に自分の願い事を書いて・・・あの大きな笹の葉に飾るんです」
「へー・・・って、それだけ?」
悟空がそう聞くと、クスクス笑って説明を始めた。
「男のご一行様だから関係ないと思っていたんですけど・・・その短冊に願いを書いて、想いを寄せる相手と同じ紐で笹の葉に吊るせばその二人は幸せになれるというジンクスがあるんです」
「ふん、よくあるネタだな」
三蔵が興味なさそうにその短冊をピラピラと振っていた。説明を聞いていると、いつの間にか宿屋に着いていた。着いたら余っている部屋が奇跡的にも四つあった。久々の個室だと四人とも喜んでいる。
「えーっと・・・悟浄、三蔵?二人で買出しに行ってきてください」
「げ・・・早速かよ;」
「何で俺まで・・・」
「悟浄の買い物が一番多いんですよ?三蔵はたまには買出しに行って運動をしないと早いうちにおじいさんになってしまいますからね」
八戒が笑顔でそう言っていると、後ろで悟空と悟浄が爆笑していた。そんな二人に切れて三蔵は本日二度目の発砲をした。
なんとか落ち着いた二人は、町に出て八戒から預かったメモを見ながら買い物を始めた。
「しっかし・・・人が多いなぁ・・・」
「ウザイ」
歩く速度がいつもの半分くらいしか出ない。なかなか終わらない買い物に少々イラつき始める三蔵様。その様子を悟浄は横目で見ていた・・・あ、買い物に出てから六本目の煙草・・・多すぎない?
「ねぇ、そこの色男さん」
艶っぽい声をした女の人の声が聞こえた。三蔵と悟浄は揃って振り向くと、声にあった大人の女性の姿があった。その人は、迷うことなく悟浄に近づいた。
「貴方、この町のお祭り行事、知ってる?」
「あぁ、短冊に願いを書くってやつだろ?」
「じゃあ、私と一緒に願い事考えない?私なら夜遅くなってもいいし・・・」
そう言いながら悟浄の腕に絡んでくる。三蔵はそんな光景を見ないように空を見ていた。だが、やはり気になるので横目で見ている。妙に嬉しそうな悟浄の顔。悟浄を欲する女の濡れた瞳・・・それら全てがイラつく。だが、三蔵は自分がいるから断るだろうと思ってその言葉を待っていた。
「あー・・・それもいいねぇ・・・」
悟浄の口から驚く言葉が出てきた。自分がいるのに?他の女と行くのか?そんな思いが一気に出てきた。もう我慢できないと吸っていた煙草を地面に投げ捨て、来た道を戻ろうとした。
―パシッ―
腕を掴まれてその行為は実行できなかった。
「けど悪いね、お姉さん。俺、あんたよりも美人な人知ってるから。んじゃ」
軽く言い放って三蔵の手を引いて宿へ戻ろうとした。三蔵は少し振り返って先程の女性を見た。すると、すごく悔しそうな顔をしていた。それだけで優越感に浸れた。
「いやー、参ったね。俺ってばモテモテだから♪」
いかにも嬉しそうな顔をする悟浄を見てムッとしながら三蔵が相槌を打った。
「ふん・・・てめぇに声をかけるなんて・・・あの女も物好きだな」
「あらら、三蔵様ったらそんなこと言っちゃってー」
いつもの悟浄だ・・・と三蔵は安心をした。悟浄も三蔵の機嫌が回復したんだとほっとした。
「なぁ、三蔵?」
「あ?」
「短冊・・・このまま飾りに行かねぇ?」
そう言って悟浄は何処からか短冊を出してきた。だが、そこには何も書いていない。
「飾るって・・・何も書いてないのにか?」
「ん?あぁ、これね」
悟浄は三蔵の顔を覗きこんでにこっと笑った。
「俺の願いは三蔵と幸せになることだから何も書かずに吊るすだけでご利益あるってわけ。三蔵は何か書く?」
ストレートに言われて三蔵は顔が赤くなってるのを見られないように顔を背けたが、悟浄にばれたらしく、小さく笑っていた。悟浄を睨んでみたが、逆に『可愛い』と言われたので諦めた。
「あー・・・で?三蔵は何を願うんだ?」
「ふん・・・神に願い事をするなんてことに興味はない。俺の願いは俺が掴む」
「三蔵らしいな」
自分だけに向けられる笑顔。三蔵はそんな悟浄の笑顔が好きなのだ。一つ深呼吸をして三蔵は歩き始めた。
「さっさと行くぞ。飾りに行くんだろ」
「ぅえ?三蔵??」
「てめぇのと俺のをあそこに吊るすんだろうがっ///」
前を歩く三蔵の顔を悟浄は見られないが、三蔵の耳が赤くなっていたことに気が付いた。それが愛しくて愛しくて・・・大人しく三蔵のあとに付いて行った。
「やだ、三蔵様ったら可愛いこと言ってくれるねぇ」
「黙れ!!」