赤い果実
街を歩いていると、悟浄の目に赤いものが映った。
「・・・林檎・・・」
それを手にしてみていると、店員が『甘くて美味しいよ』と言ってきたので一つ買おうとした。すると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。
「悟浄、余計なものは買わないでくださいよ?」
声の主は八戒だった。今、悟浄は八戒と買い物に来ていたことを思い出した。
「八戒、これ買ってもいいか?」
「え?林檎ですか?」
「そ」
八戒はいつもと違う様子の悟浄を見て頷いた。
「一つくらいならいいでしょうね・・・」
「いや、一つじゃないし」
「え?」
「四つ」
あれから林檎を買ってもらった悟浄は歩いているとき、ずっと林檎を眺めていた。
「悟浄、そんなに林檎がほしかったんですか?」
何も会話が出来ない八戒はそんなことを言ってきた。その質問に『あぁ』と言って林檎から視線を外して八戒を見る悟浄。
「いや、林檎がほしかったって言うんじゃなくて・・・」
少し口篭らせて悟浄が視線を林檎に向けた。八戒は首を傾げながら答えを待つ。
「その・・・昔八戒と再会したときも林檎・・・を持ってたときだからさ・・・また話しかけてくれるかなって思ったから」
照れながら話す悟浄が言ったのは、八戒が三仏神に会った後のことだ。悟浄に会わなかった数日間、寂しいと感じて三蔵に会うついでに悟浄を捜そうと街を歩いていたら、捜し求めていた『赤』を見つけたのだ。それで声をかけた。
「あの時、八戒が声かけてくれて嬉かった。また会えてよかったって思ったんだ」
三仏神に罰を下されて死んだんだと思った。それを聞いたときの喪失感は言葉では表現できないほど。自分にとって八戒という人物はもうなくてはならないものになっていた。
「それを思い出してみてたんだ」
「悟浄・・・」
「って、何言ってんだろーな、俺」
照れ隠しをしようと悟浄は歩みを速めた。それを見て八戒はそっと悟浄の手を握った。
「っ八戒!?」
「僕は・・・あの時どれだけ貴方に会いたいと思ったことか・・・」
「・・・そーですか」
「えぇ、悟浄、愛してますよ」
「はっ・・・そりゃあこっちの台詞だ」
僕は出会ったときから惹かれていた
貴方の
髪
瞳
声
仕草
全てに
貴方の手にある赤い果実は
僕と貴方を再び引き合わせた
禁断の果実