おまじない
ルカは散歩を楽しんでいた。この日はユダと一緒にいなく、一人でだった。いつもはユダの側で不逞の輩(シヴァ)がユダに悪さをしないか見張って・・・いや、見守っていたのだ。だが、一緒に散歩に行こうと思っていた相手がいなくてしょうがなく一人で散歩をしている・・・と言うのが真相である。
「ふぅ・・・」
何だか寂しいらしい。やはりユダが気になるらしく、散歩と言いながらついユダの姿を捜していた。
「・・・ん?」
ルカはふと誰かの話し声が聞こえてきた。もしかしたらユダかもしれないとその近くへと寄って行った。
「あれは・・・」
そこにいたのは、期待とは違っていた。
「・・・ちょっと、キラ兄さん!聞いてるの?」
「あぁ、聞いてるとも」
放浪天使のキラとマヤだった。少し残念そうにルカは帰ろうとした。
「本当に?穴掘りばかりしてないで聞いてるの?」
「勿論だ。シヴァが最近様子がおかしいんだろ?」
「うん・・・何だか、怪しげな呪文唱えてたし・・・その中にユダさんの名前も・・・」
またキラは穴掘りをしていたのか・・・と呆れていたが、『ユダ』という単語が出てくればルカも黙っていない。それまで身を潜めて聞いていたルカだったが、ガサガサと茂みから出てきた。
「マヤ、それは本当か!?」
「「ぅわ!?ルカさん!!?」」
二人は驚いて動きが止まった。そりゃそうだろう。何せルカは茂みから出てきた所為で頭に葉っぱをつけて突然現れたのだから。いつものルカからは想像が出来ない。
「聞いているのか?」
「あ・・・はい」
「今の話は本当か!?」
「え・・・その時ガイも一緒だったから多分・・・」
「そうか・・・シヴァめ・・・またユダに何かしようとしてるのか!こうしてはいられない。わたしはすぐにユダを捜しに行く。それでは」
「はい・・・ご苦労様です・・・」
キラも呆気に取られながらルカを見送った。
「あ・・・キラ兄さん、ルカさんの頭に葉っぱがついてたの言えなかった」
「今のルカさんに何を言っても仕方ないと思うぞ?」
この時、キラは少し前にマヤが言ったことを理解した。
(詳しくは『想い過ぎて』をどうぞ★)
同時刻、何処からともなく声が聞こえてきた。
「・・・・・・・・・・・・」
そこへ、誰かが通ってきた。
「・・・?この声は・・・」
聞いたことがある声だったので近くを探ると、すぐ近くの木の影から聞こえてきた。
「あぁ、やはりシヴァでしたか」
「ぅわぁ!!シ・・・シン!!」
そう、声の主はシヴァだった。そこへゴウに用事があったシンが通ってきたのだ。シヴァは何かを隠すようにシンに向き直った。そんなこそこそしたシヴァが気になったシンは首をかしげながら質問をした。
「こんなところで何をしているんですか?」
「シンには関係ないだろ!!」
「ですが・・・」
「うるさぁい!」
シヴァが立ち上がってシンに怒鳴ったが、それが悪かったらしい。隠していたものが腕から何かのノートが落ちていってしまった。
「Σあ!!」
「え?」
落ちた反動である一ページが開かれてしまった。そこには・・・。
「・・・シヴァ・・・これは・・・」
「あぁ!!シン!!何見てるんだよ!」
慌てたシヴァはシンの腕からノートを奪った。顔を赤くしながらシヴァはシンに怒り始めた。
「折角97個まで書いたのに!!」
「え・・・何をですか?」
「何をって、決まってるじゃないか!ユダの名前だよ!!」
「・・・・・・え?」
コレにはシンも困ってしまった。そりゃユダの名前だけ書いてあるノート・・・しかもその数97個らしいが、見てしまったら普通は驚くだろうが、シヴァが怒るほど大変なものではないと思っていたからである。
「もう!また一から書き直しだよ!!」
「え・・・と・・・シヴァ?何か私、悪いことをしました?」
「そうだよ!僕はおまじないをしていたのに!!」
これはまた困った。いきなりおまじないと言われてもシンにはシヴァが何を何のためにやっているのかなんて把握していないからだ。
「・・・では、そのおまじないのやり方とは?」
「このノートにユダの名前を口にしながら100個書くんだよ。そうすれば、その相手と仲良くなれるっていうおまじない!けど、それをシンが邪魔して!!本当にシンは僕とユダの仲を邪魔するんだな!」
シンはもう何を言っていいのか分からなかった。そりゃ、おまじない・・・というか、他人の努力の邪魔をしたら気分は悪い。けど、その努力は果たしていいものなのか・・・という問題から考えてしまった。
「―――シヴァ!!」
そんな困った状況に登場してきたのは今の今までユダを捜していたルカ。捜している途中にシヴァとシンの声が聞こえてきたのでこちらに到着したようだ。
「・・・今度はルカなの?」
「シヴァ、またユダに変なことをしようとしていたのか!?」
「へ・・・変だって!?失礼だよ!!僕は、ユダのことを想ってこうやっておまじないをしてただけなのに!!」
「おまじないだと!?」
ルカの口から『おまじない』って・・・合わないιと密かに思ったシンがその喧嘩を見ていた。
「大体、人が何しようとルカには関係ないだろ!」
「そのやっていることがユダに関係しているならわたしにも関係ある」
「自分とユダは一心同体みたいな言い方しないでよ!」
そろそろ止めないとやばいか・・・とやっと思い始めて止めに入ろうとするが。
「シン、こんなところにいたのか」
そこに現れたのはこの喧嘩の原因となっているユダだった。
「「ユダ!!」」
「あ、ユダ。どうかしましたか?」
「いや・・・さっきゴウに会って『まだシンが来ない』と心配していたから捜していた」
「そうでした、わたし、ゴウと約束していたんです!」
自分の用事を思い出したシンは慌てて走り出した。
「シン、俺もゴウに用があるから一緒に行く」
「「え!?」」
「そうなんですか?」
「あぁ、一緒に行ってもいいか?」
「ユダがいいならわたしは構いません」
シンも慌てている所為か、シヴァとルカの存在を忘れてしまっていた。
「ユ・・・ユダ!」
「・・・あぁ、ルカ」
「今、シヴァが・・・」
「言うなよ!!」
「すまない、シンが急いでいるようだからおれも行ってくる」
「な・・・ユダ!!」
だが、シヴァの声もルカの声も今のユダには届かなかった。ユダはシンを中心にして行動していると言っても過言ではないようだった。ユダとシンの後を見送ってしまったシヴァとルカは呆然としてしまった。
「・・・シヴァ」
「・・・何さ」
「結局、わたし達はシンには敵わないのかもしれないな・・・」
「ふ・・・ふん!そんなの関係ないね!!」