お前には俺がいればいいんだよ
俺にはお前がいればいいんだよ
独占欲 ―第一話―
蛮は士度を無理矢理店から出して、無限城に向かっていた。
「おい!蛇ヤロー!何で無限城に向かってるんだよ?」
「・・・」
無言のまま士度を引っ張ってどんどん無限城に近づいて行った。
「聞いてるのか!美・・・」
「うるせーよ、ついて来い」
冷たくそう言われて士度は少し違和感を覚えた。
「美堂?何かあったのか?」
士度の優しい質問に自分は何て酷い奴なんだろうと思って士度を掴んでいた手の力を緩めた。
「・・・おい?」
「何でもない・・・とにかく、ついて来てくれ・・・」
今度は弱く言われて士度は何も言えないで蛮について行った。
「あれ?士度じゃないですか」
前から少年っぽい、聞き覚えのある声に士度は反応をした。
「あ?花月か。久しぶり」
「えぇ、お久しぶりです。今日はどうかしましたか?」
士度と花月は元VOLTSの四天王で仲が良いのは分かっていたが、こうも見せ付けられると流石の蛮も苛立ってくる。
「・・・美堂蛮、どうかしたか?」
いきなり花月の後ろにいた十兵衛が蛮に声をかけた。
「・・・何がだよ?」
蛮は苛立ちを隠さないまま十兵衛に聞き返した。
「お前、何をそんなに苛立っている?それに、苛立ちの中に殺気も感じるが・・・?」
そこまで言われて蛮は驚いた。やはり目が見えない十兵衛は人の何倍もそういう能力に優れているんだと思った。
「最近苛つくことが多くてな。おい、そろそろ行くぞ。猿まわし」
「あ?それじゃ、花月、また近いうちに」
「そうですね。お二人もお気をつけて」
士度が『また近いうちに』と言った瞬間、蛮は心の中で花月に言った。
―『また近いうちに』なんてのはもうないぜ?糸巻き―
士度と蛮は更に深く無限城に入っていった。
「・・・どこまで行くんだ・・・あ」
士度が何かに気がついて少し横道に寄った。それを見て蛮も近くに寄った。
「何かあったのか?」
蛮は士度が何を見ているのか気になってそう問い掛けた。すると、士度は自分の手を上に上げた。すぐに鳥達がやってきた。
「久しぶりに会う奴等だ。挨拶をしたんだよ」
士度がそういうと、鳥達は嬉しそうに士度の周りに舞い降りた。先ほど士度の手の上に乗った鳥はそのまま士度の方へ寄っていった。それを士度は嬉しそうに眺めていた。蛮はこんなに小さな鳥にまで嫉妬をするほどに士度が好きなのだ。
「・・・やけに嬉しそうじゃねーか?」
そんな気持ちを必死で隠そうとして嫌味っぽく言ったつもりだったが、士度はそんなことお構いなしで蛮に言った。
「こいつらは・・・俺の仲間だ・・・」
その時の士度の顔は、誰も見たことのない穏やかな顔だった。蛮は自分の知らない士度をみてまた苛ついた。
「・・・そんな目をするなよ・・・そんな目を他のヤツに見せるなよ・・・」
「あ?何か言ったか?」
蛮は士度に問いかけられて慌てて何でもないと言って窓の外に向いた。
―お前には・・・―
自分の心の闇がもう殆ど表に出ていてそれを抑えるのに必死だった。もちろん、士度はそんな蛮の心境なんて知らないからまだ鳥達と戯れていた。
「お前ら、よく今まで生きててくれたな。ありがとう」
士度がお礼を言ってそいつらの頭を撫でている。優しく、割れ物を扱うように・・・。自分には決してやらない仕草。自分には決してやらない言葉。その全てが欲しいと思った。
―・・・限界が近い・・・―
士度はいつの間にか蛮の隣に立って自分と同じく空を見ていた。気が付かなかったが、もう夕方を過ぎて夜に近くなっていた。
「何だ、もう夜だったのか・・・」
士度の声が異様に近くて思わず俯いてしまった。
「お前、今日は本当に何の用があってきたんだ?」
自分の反応がないから士度は蛮の肩の上に手を乗せた。
「聞いてんのか?」
蛮は何も言えなかった。
「・・・まぁ、いいか。ほら、帰るぞ?」
深くは追求しない。俺から理由を言うまで待ってくれる。
「こんなところでそんな格好じゃ寒いだろ?」
俺の頭の上に優しく手を乗せて撫でてくれる。凄く安心できて俺は士度に何か言いたくて顔を上げたが・・・。
「早くしないと銀次が心配するぞ?」
『銀次』と士度は言った。それだけで何も言えなくなった。
「俺もそろそろ帰らないとマドカが心配するしな」
『マドカ』と士度は言った。今ここにいるのは俺だけなのに・・・。
「・・・本当にどうしたんだ?美堂」
こいつは本当に心配したりすると俺の名前で呼んでくれる。けれど、それは苗字。決して下の名前では呼んでくれない。それがイヤで嫌で・・・。
「別に深くは追求しないけどな」
士度のこの時の優しい顔は嫌いじゃないが、これは他のヤツにも向けているもの。さっきの鳥に向けた特別なものじゃない。俺はそういう特別な士度もいつもの士度も全て欲しい。
「・・・よ・・・」
「あ?何だ?」
士度は俺の声が聞こえなかったらしく、俺の近くに顔を寄せてもう一度声を聞こうとしていた。
「何か言ったか?」
「お前は・・・」
―俺のモノなんだよ・・・―
士度はその意味が分かっていなく一瞬隙が出来た。その瞬間を俺は見逃さなかった。すかさず士度の腹に一発殴って気絶させた。
「な・・・美堂・・・!?」
「悪いな、士度・・・けどな・・・」
―お前は俺のモノなんだよ―
士度は何が起こったのか分からないまま意識を失った。それを見届けてから俺は士度の近くに寄った。
「士度・・・本当はこんなことしたくなかったんだけどな・・・」
俺だけを見ないお前が悪い・・・と一言呟いて士度を抱えて無限城の奥へと進んだ。
―誰にも触らせない・・・誰にも見せない―
「こいつは俺だけのモノだ・・・!!」